「やっぱり、勝って、みんなとハイタッチできたことが一番ですね」。6月8日巨人戦。西武木村昇吾内野手(37)は、約1年ぶりに立った1軍グラウンドを、充実感を込めて振り返った。

 昨年6月17日以来の出場だった。同7月に断裂した右膝前十字靱帯(じんたい)を手術。プロ15年目の開幕は育成選手として迎えた。リハビリを経て、この日に支配下選手契約。即「9番三塁」でフル出場した。5回には中前打も放ったが「勝つためにプレーしているわけですから」。ヒットよりも、チームの一員として勝利の喜びを分かち合えたことが、うれしかった。

 復帰までの月日を「そんなにつらくなかった」と振り返る。「もどかしい気持ちがなかったと言えば、うそになる。でも、受け入れるしかない。トレーナーさんやスタッフ、家族ももちろん、そういう方たちのおかげでやってこれた」。感謝の気持ちが、プレーできない時間を「成長するための、新たな経験」と捉えさせてくれた。

 励みもある。中学1年生の息子が野球を始めた。グラウンドに立つ父親を見る目も変わったという。希望ポジションは、木村昇が主戦場としてきたショート。「プレーするのは息子のためじゃなく、チームのためであり、自分のため。でも自分の姿を見て、何かを感じてくれたらうれしいですね」。

 背番号は「121」から、昨季背負った「0」に戻った。「ここからです。もっともっと試合に出て、野球がしたい。それだけです」。大けがを乗り越えた37歳。貪欲な野球小僧は、力強く誓った。【西武担当=佐竹実】