瞳を真っ赤にして、成長へのきっかけを手にした。日本ハムのドラフト1位堀瑞輝投手(19)には、プロ初失点から得たものがあった。8月17日ロッテ戦。わずか1点リード、終盤7回での出番だった。重要な局面。揺らぐ心を表すように変化球は上ずり、定まらない。ペーニャに同点弾、中村に一時勝ち越し弾と2本塁打を浴びた。チームはサヨナラ勝利も試合後、感情が爆発した。

 ロッカールームに戻ると増井、宮西ら先輩ブルペン陣と、この日の先発加藤が待っていた。「加藤さんの勝ちを消してしまったのが大きくて、涙が出てしまった」。頭を下げ続けているうちに涙があふれた。同じ左腕の先輩宮西からは「オレなんか3回くらい、加藤の勝ち消してる」とユーモアたっぷりに励まされた。厳しい言葉を覚悟していたが、かけられた優しい言葉の数々。球場を出る時、目は痛々しげに腫れていた。

 野球で流した2度目の涙だった。広島新庄2年時の夏甲子園で、清宮擁する早実に4回途中3失点でKOされた。チームも6-7と競り負けた。「あの時も、僕が終わらせてしまった」。悔し涙もあれば、憤りをあらわにしたこともある。3年夏の広島県大会決勝。味方の度重なる失策に、舌打ちして空気を乱した。迫田監督から「チームに悪影響」と注意を受け、マウンド上では感情をコントロールする意識を持った。感情が最高潮に達した時、進化につながるきっかけをつかんできた。

 プロで最初に直面した悔し泣きからは何を得たのだろうか。2軍の千葉・鎌ケ谷で先発調整する顔は、吹っ切れたように晴れやかだった。打たれた理由は明らかだった。「(2番手の田中)豊樹さんが打たれた時点で1点差。僕じゃなくて、宮西さんがいくと思っていた。スイッチが切れてしまっていたせい」。勝負どころで投入されたのは、百戦錬磨のセットアッパーではなく新人の堀だった。

 チームの意図、期待の大きさを理解した今、初めて使命感が芽生えた。「いずれは、ああいう所で投げないといけない。今度は救えるようになりたい」。あの夜、ぬれていた瞳は乾いていた。りりしく光ったまなざしで、成長への一歩を踏み出していた。【日本ハム担当=田中彩友美】