先日、人前で話しをする機会があった。普段から文章を書く仕事をしているため、伝えたいことを文字で思い浮かべることはできるのだが、それを言葉にして発表することに慣れておらず、緊張感もあって、なかなかうまくしゃべることができなかった。

 11月11日、日本ハム大谷はメジャー挑戦表明の会見で、約1時間、記者からの質問に答え続けた。相手の目を真っすぐに見て、自分の言葉で語る姿には、あのときもすごいなと感心したのだが、今回の自分の体たらくぶりにより、その思いは一層強まった。

 さて、その大谷の会見で、私がもうひとつ、気になったことがあった。冒頭で本人も断りを入れたように、風邪をひいていたことだ。5年間、大谷を近くで取材してきたが、この男、よく風邪をひく。せきや鼻水はしょっちゅうで、ホームランを打ってダイヤモンドを一周する際に、ダラダラと流れてくる鼻水を手で押さえたシーンには、「泣いていたのでは?」「指にキスした? 指輪??」とインターネットで話題にもなった。

 プレーできているうちはまだいいが、15年にはオープン戦を欠場、翌16年にも公式戦を体調不良で早退したことがある。今季も左太もも裏を肉離れした直後に、インフルエンザに感染して隔離された。プロ野球選手だって人間なのだから、風邪をひくのも当たり前なのだが、屈強な体と“病弱”とのコントラストに、少しばかりふに落ちないものを感じていた。

 そんな私のくだらない疑問は、球団トレーナーから聞いた話で氷解した。「トレーニングで体を追い込んでいるからだと思います。それが関係しているのではないかな」。大谷はチーム1の練習の虫。朝から晩まで、投手、打者の練習にトレーニングなどなど、遊ぶ暇もなく努力している(本人は「うまくなりたくてやっている。練習が嫌だと思ったことはない」と言うから“努力”という表現は違うかもしれないが…)。圧倒的な練習量で、体力のほぼすべてを使い果たしている結果、風邪などのウイルスに抵抗する力が残されていないのだと。

 …納得! 大谷がしょっちゅう風邪をひく理由としては、とても説得力のある説である。あの大事な会見で風邪声だったのも、しっかりと練習を積み重ねている証しだったのだ。【日本ハム担当=本間翼】