スポーツ界への入り口に新潮流が生まれた。パ・リーグ6球団とパシフィックリーグマーケティング株式会社(PLM)は25日、東京・飯田橋で合同転職イベント「パ・リーグキャリアフォーラム」を開催。2月には新卒向けを含めた同様のイベントがあったが、今回は卓球のTリーグやバスケットボールのBリーグや同リーグの栃木、横浜、JリーグのJ1神戸や川崎F、ゲームメーカーのコナミなども参加し、野球界以外の「スポーツ関連ビジネス」を展開する企業も出展した。スポーツ業界への転職を狙う約1400人が参加し、盛況だった。

 企業プレゼンを行ったロッテの事業本部マーケティング部チケット・ファンクラブグループ企画チームの長谷川泰伸氏(31)は転職を経験している。京大では野球部のマネジャーを務め、新卒時は野球界への就職を狙っていたが「新卒採用を発見できなかった」ことから電機メーカーに就職。8年間法人営業職を務めた。

 ところが夢を諦めきれず、球団のHPで中途入社社員の募集を発見。ロッテ球団に転職した。今回のようなイベントには「なんでなかったのかなと思うし、うらやましいですよ」と話した。現在はVIPルーム、パーティールームなど企画や市町村からの送客、イベントチケットなどの企画を行う。昨年は最下位に沈んだロッテだが、球団の収入は史上最高を記録したという。

 採用を担当している管理本部本部長の野村陽一氏(48)は、ロッテ本社から球団に異動してきた。大学時代は東都大学リーグでプレー。「野球に携わる仕事がしたかった」が、本社で菓子の営業に励んでいた。異動の希望は持ち続けていただけに、転職者の気持ちは分かる。「いろいろな人がいる組織は強い」という信念もあり、元選手の採用にも積極的。以前は契約社員に限定していた公募を正社員にも拡大し、強い組織づくりを狙っている。

 2月のイベント「パ・リーグビジネスキャンプ」では、西武とソフトバンクが1人ずつを採用している。ビジネス企画コンテストで1位となった東大生には役員面接権が与えられたが、外資系コンサルティング会社に進んだという。新卒から定年まで同じ会社に勤める人間は1%という銀行などと同様に、コンサルティング会社に一生勤務する人は少ない。こうしたきっかけがあれば、優秀な人材がいつかスポーツ業界を志望するきっかけになるはずだ。

 イベントを仕掛けたPLM根岸友喜社長には夢がある。「2028年、小学生の将来なりたい職業の9位にスポーツビジネスパーソンを入れる」。1位でないのは、現在1、2、7位のサッカー選手、野球選手、バスケットボール選手に敬意を表してのことだ。米大リーグでは既に、エリート層がスポーツビジネス界に参入し、フロントとして活躍している。日本でも医師や建築士、金融業界などを目指しているような優秀な学生が野球界を職業として選択肢に入れ始めれば、5倍以上に開いた収益面での日米格差も少しは埋まるだろう。

【NPB担当 斎藤直樹】

スポーツ業界向け転職者イベント「パ・リーグキャリアフォーラム」でのトークショー
スポーツ業界向け転職者イベント「パ・リーグキャリアフォーラム」でのトークショー