<日本生命セ・パ交流戦:中日5-4ソフトバンク>◇8日◇ナゴヤドーム

 「怪物」は神様に祈った。現役続行を願って手を合わせた。まだ残暑が残る昨年の9月。ホークスに在籍していた中日松坂は、右肩痛の不安もようやくぬぐい去れようとしたときだった。福岡・筑後市にあるホークスのファーム施設から車を飛ばして向かった先は「学問の神様」で有名な太宰府天満宮だった。

 「8月と9月だったですかね。ちゃんとお参りしてきましたよ。2回も。まだ野球ができますようにとね」。今年の開幕前。オープン戦でヤフオクドームを訪れた背番号「99」はそう言って苦笑いを浮かべた。2度目の参拝は、ホークスから「戦力外」の打診があった後だったはずだ。「支配下選手」から外し、リハビリに専念していいというホークスの提案に、松坂は首を縦に振ることはなかった。あくまでも「現役」にこだわった。無念の打診…。京の都から左遷されて九州に下った道真公の「無念」さに共鳴するものがあったのかどうかは分からないが、松坂には年を越して「東風」が吹いた。

 ホークス在籍の3年間、右肩の故障に泣いた。高額の契約に対する責任も感じていただろう。この日、初対決となったホークス戦での投球はピンチを背負いながら最少失点で5回を乗り切った。球界のエースとして君臨してきた男の意地の投球でもあった。「タラ・レバ」は考えたくないが、今ならホークスでも先発ローテ入りは確実かもしれない。それにしてもホークス先発の千賀はどうしたことだろう。またしてもマウンドからはエースとしてのプライドも意地も感じられなかった。【ソフトバンク担当 佐竹英治】