8月8日。午後4時48分ZOZOマリン発のバスに乗った。

 「皆さん、千葉ロッテマリーンズの、藤岡貴裕です。このバスは-」

 何度聞いただろうか。ぼくとつとしたイントネーションの自己紹介から始まるアナウンス。すっかり耳なじみだ。でも「千葉ロッテマリーンズの」ではない。藤岡貴裕投手(29)は7月26日、トレードで日本ハムに移籍した。ふと思った。これ、いつまで聞けるのだろう。

 幕張本郷駅~海浜幕張駅~ZOZOマリンを結ぶ京成バスの車内アナウンスには、06年春からロッテ関係者が起用されている。なかには楽天今江やヤクルト大松ら、他球団に移籍した選手もいる。またサブマリン渡辺俊介氏のように、プロ野球界から離れた選手もいた。入団があれば退団がある。ずっと「ロッテの」ではいられないのだ。

 京成バスの担当者の方に、問い合わせてみた。

 「私たちも、選手の移籍はニュースで出たタイミングで知ります。音声をつくる業者への、藤岡選手のアナウンスを外す発注はもう済んでいて、納品もいただいています。近日中に、聞けなくなると思います」

 入れ替え作業は、約100台ある当該車両で順次、夜間に行われる。すべての車両の対応もまもなくだという。チームは10日から大阪、札幌、仙台と遠征に出る。聞き納めかもしれない。

 2月の石垣島キャンプで担当になったとあいさつしたら、藤岡にこう返された。「でも鎌田さん、毎年いますよね。東洋(大学)の時から、毎年」。

 東洋大3年時の大学日本一、4年時の2連覇、ドラフト、結婚、トレード。思い返せば随分、「節目」を書かせてもらった選手だった。取材で群馬の実家におじゃましたこともあった。会っていない年もあったはずだが、少々の寂しさを感じるには十分な気もする。

 背番号「18」のユニホームで応援に来た人や、登板1試合1試合を心待ちにしていた人はもっとだろう。

 次は札幌ドームか幕張か。1軍戦でのまたの“再会”を、ファンの皆さまと一緒にお待ちしています。【ロッテ担当 鎌田良美】