広島新井貴浩内野手(41)が5日、マツダスタジアムで会見し、今季限りでの現役引退を発表した。16年にはリーグMVPを獲得した球界を代表するスラッガー。誰からも愛された男が、プロ20年目の区切りを迎え、惜しまれながらバットを置くことを決断した。

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質問者の目を見て答える姿は、引退会見の席でも変わらなかった。野球にだけでなく、人に対しても真っすぐな人柄がにじんだ。汗だくで取材対応し、関係者から頼まれたサインにも応じる姿を何度も見てきた。

絶妙な“後輩いじり”で場を盛り上げるだけでなく、引き締め役も担っていた。チームの雰囲気に影響するような態度を出した選手をあとでこっそり呼びつけ、正したことも1度や2度でなかったと聞く。会沢が「兄貴」と言えば、小窪は「特別な存在」と表現するのもうなずける。

後輩選手だけでなく、裏方への気配りもできる人だった。遠征先ではラーメン店巡りだけでなく、サウナにもよく足を運んでいたという。同期入団のコーチに聞いたことがある。「新井のサウナ好きは父親の影響」と。幼少期に父親と街のサウナへ行くのが日課だったそうだ。チームに漂う温かい空気は「新井さん」を大黒柱とした広島が、家族のような存在だったからかもしれない。【前原淳】