3軍制を敷いてからソフトバンクは「育成」のチームなどと言われているが、チーム作りの根幹は「スカウティング」である。ホークスのキャンプ地、宮崎・生目の杜には普段は各地に散っている球団スカウトたちが入れ替わりでやってくる。新入団選手のみならず、これまでの担当選手にも目を配る。貴重なコミュニケーションの場でもある。

この日、打撃練習を行っていた上林に作山スカウトチーフ補佐が声をかけていた。上林の担当スカウトである。「やっぱりうれしいですよ。現場で会うのはキャンプだけですからね」。苦しい練習の中でも担当スカウトの言葉に上林は笑みをこぼした。

育成出身の千賀、甲斐にしろ、ドラフト上位の柳田、今宮にしろ、指名しなければ入団はない。「育てる」ことは当然ながら、素材の見極めが最も重要である。作山スカウトは昨季限りで引退した摂津の担当でもあった。「昨オフ、摂津から電話がありました。『引退することになりました。ありがとうございました』と」。成功者で送り出すことはこれ以上ない喜びだが、すべての選手が活躍できる世界ではない。他球団よりも優れた「金の卵」の発掘は責務。チーム編成のニーズに合った好素材を探し続ける終わりなき仕事だ。

作山スカウトは91年ドラフト2位で東北福祉大から即戦力投手としてダイエー入団。現役2年でユニホームを脱ぐと、当時の根本監督からスカウト転向を命じられた。今年で50歳。スカウト歴は26年目。人生の半分以上、全国を駆け巡っている。「人のネットワークが大事だからな」。スカウト就任にあたって根本氏からの言葉を今も胸に刻み込んでいる。常勝軍団作りの礎は、彼らが担っている。【ソフトバンク担当 佐竹英治】