<阪神6-3中日>◇29日◇甲子園

メッセンジャーが入団してから10年間、ボールを受け続けた女房役がいる。片山大樹ブルペン捕手(44)。入団したばかりの荒々しい時代から、ここ数年のチームのために身を削った姿まで、ミットを通じて感じたものは…。

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片山ブルペン捕手には忘れられない一言がある。「2年前だったかな…」。シーズン前に行われた決起集会。メッセンジャーがふともらした。「もう先も長くないから優勝したいんだ」。チームのために投げ続けた大黒柱が抱いていた思いだった。

メッセンジャーが入団した10年からブルペンで女房役だった。「投げ方は今と全然違う。最初は若い投手特有のダイナミックな投げ方というか、コントロールは良くなかった。球は速かったけどね。力いっぱい投げている感じだった」。来日1年目の10年シーズン、メッセンジャーは4月から約3カ月間2軍生活を経験。1軍に戻ってくると、無駄な力が抜けてコントロールも抜群。見違えるフォームになっていたという。

ブルペンでも入団当初は、がむしゃらに投げ込むだけ。それが年を重ねるごとに、意識して低めに集めるなど変化が見えた。「毎年進化していた。成長が目に見えて分かった。今では1球1球丁寧に、ゲームさながらに投げ込む」。アドバイスに素直に耳を傾け、自分なりにアレンジ。活躍するために、実績を重ねても進化を止めなかった。

17年8月には打球を受けて右足腓骨(ひこつ)を骨折しながら、CSに間に合わせた。しかし体は万全ではなかった。足を踏み込んでも踏ん張りが利かず、下半身も動いていない。ミットに収まる球にいつもの力はなかったという。「足をかばうから他の部分に影響が出て痛くなるし、見ていて痛々しいくらいだった」。メッセンジャーを奮い立たせたのはチームへの思いだけ。「気持ちでなんとか、チームのために、と帰ってきた。本当にすごい」と振り返る。

思い出は数え切れない。「常に受け続けたから…。大黒柱がいなくなるのは残念な気持ちだけど、メッセンジャー以上の逸材に出てきてほしい。メッセンジャーには『お疲れ様』『ありがとう』と言いたい」。またメッセンジャーのような大黒柱の球を…。それが次の願いだ。【阪神担当 磯綾乃】