最速163キロ右腕・佐々木朗希投手(18)がロッテに導かれてから、1年が過ぎた。昨年10月17日のドラフト会議で4球団競合の末、ロッテ井口資仁監督(45)が赤い糸をたぐり寄せた。

大船渡市の郊外にあるホール。南北を山に囲まれた小さな港町。周りには民家しかない。日が暮れ、星空が広がり始めていた。バスでやって来た野球部員や保護者たちに見守られ、佐々木朗は大勢のカメラに囲まれながら、その時を待っていた。ドラフト会議を通じて、表情はあまり変わらなかった。

壇上で、何を考えていたのだろう。プロ入り後に聞くと「いや、普通でした。就職先が決まるので、どこになるのかなという感じでした」。星稜・奥川(現ヤクルト)や明大・森下(現広島)の抽選が先にあり「そこは気にはなっていました」と笑った。奥川がヤクルトに決まった瞬間、少しにやりとしていた。

運命が決まる。もしかしたら人生も決まる。大事な瞬間を大勢に目撃された。「とても光栄なことですし、そういう普通じゃ経験できないことを経験できたのは、とても幸せなことだと思います」。ロッテへの入団意思も、すぐに固まっていたという。

あれから1年。本人いわく「190・8センチくらい」だった身長は、192センチにまで伸びた。高校時代も言われるほど細くはなかったが、プロでの1年間で下半身は明らかに太くなった。1軍同行での英才教育。一時期ノースローも続いたが、現在はキャッチボールの球筋も見事なもの。チームは優勝争いの最中ではあるが、井口監督は「何とかいいところで放れれば」と今季中のデビューを期待。まずは月内にも2軍戦登板の可能性がある。

この日は1軍戦の雨天中止に伴い、室内練習場で体を動かした。報道対応はなかったが、球団のSNSでは「あっという間ですね」との本人談が発信された。19日に先発予定の2年目古谷も、佐々木朗らの入寮前日に「1年って、あっという間でした」とこぼしていた。3年目安田も、2年目藤原も順調に伸びている。来年の10月、彼らはどれほどの選手になっているだろう。未来は明るい。【金子真仁】

ロッテが交渉権獲得となり、思いを語る大船渡・佐々木朗希(2019年10月17日撮影)
ロッテが交渉権獲得となり、思いを語る大船渡・佐々木朗希(2019年10月17日撮影)