楽天では、注目を集めるマー君の陰で“佑ちゃん”が奮闘中だ。4年目の渡辺佑樹投手(25)が球団では育成選手として唯一の1軍キャンプに臨んでいる。8年ぶりに古巣へ復帰する田中将と06年夏の甲子園で激闘を繰り広げた日本ハム・斎藤佑樹投手と“同名”。「高校時代に言われたことはありますけど…」と“佑ちゃん”という呼び名には苦笑いも「田中さんは僕が小さい時から楽天で投げていたすごい選手。そういったところから話すことが増えたら、それはそれでうれしいです」とさわやかな笑みを浮かべた。

山梨・富士吉田市出身。富士学苑、横浜商大と全国大会とは無縁だったが、17年ドラフト4位で楽天に入団。身長183センチと上手から角度のある直球、鋭く曲がるスライダーを武器に、左腕エースの代名詞、背番号47を背負い、即戦力として期待された。だが、1軍登板は2年目の1試合のみ。制球難に苦しんだ。

「去年も序盤はよかったんですけど、中盤から全然立て直しがきかなくなってしまって…」。昨春キャンプも1軍スタート。当時の石井GMからもブルペンで直接指導を受けた。そんな中で昨年11月、石井GM兼監督から育成契約とともに横手投げへの転向を打診された。「即戦力と期待されて何年も結果が出てなかった。そろそろ変えなきゃいけない時期だと自分の中でも思っていた。ひと言言われたことで自分の中でも踏ん切りがつきました」。

オフは元同僚で巨人で活躍するサイドスロー左腕の高梨に志願の弟子入り。投球前に右足をぶらつかせるフォームはそっくりだ。「地面の力に負けないように」との助言を守り、右足着地時の反発を球へ伝えるように意識する。「惜しみなく教えてくれたのでうれしかったです」。

新指揮官も「おもしろい存在になる」と“秘密兵器”として大きな可能性を感じている。ワンポイントだけでなく、先発経験を生かし、ロングリリーフへの期待もかかる。渡辺佑は「僕のためを思って言ってくれている。1軍キャンプにも呼んでもらったので、まずは支配下になれるように。応援してくれている方々の期待に応えられるように頑張りたいです」。楽天の“佑ちゃん”が勝負の1年に挑む。【桑原幹久】