かなりグッときた。初めての球宴取材。16日のメットライフドームでの第1戦のことだ。3回、レアード(ロッテ)がセ・パ通じて、この球宴1号となるソロ本塁打を左翼席中段へたたき込んだ。ホームを踏むとスタンドへ向けて拳を突き上げる。ファンも体が勝手に反応するように、大きく手を振った。

何げないシーンだったかもしれない。ただ、声を出せない応援様式でも、球団関係なく好プレーに興奮し、拍手を送る。スタンドが1つになる。野球の持つ力を肌で感じると同時に、思い出したことがある。

14年7月19日。9年ぶりに甲子園で行われた球宴を、チケット争奪戦を制して見に行った。左翼席に陣取ると、試合前の阪神藤浪と日本ハム大谷のキャッチボールを目に焼き付け、大谷の162キロが表示された電光掲示板を必死でスマートフォンのカメラに残し、ソフトバンク柳田の豪快弾に酔い知れた。

それ以上に興奮したのが、4万5361人の観客が一体となった応援。「やま~だてつと!」。ヤクルト山田の応援歌を全力で叫んだ。柳田がヒットを打つと、隣のソフトバンクファンとハイタッチで喜んだ。

あの時のように声を出しての応援はできないが、記者席からは、ファンが一体となっているように見えた。「あらためて野球は面白いなと思いました」。第2戦を終えた阪神佐藤輝明内野手(22)の言葉に、観戦した野球ファンはうなずくだろう。

楽天生命パーク宮城での第2戦。佐藤輝のフリー打撃が始まる時、楽天のユニホームを着た親子連れとすれ違った。「おっ! 佐藤輝明がバッティング始めるぞ!」。通路で立ち止まった2人は、食い入るように背番号8を見つめていた。【阪神担当 中野椋】