今年の阪神は2軍も強い。ファーム新記録の16連勝中と絶好調だ。

まだ高卒2年目で、好調のチームの中で出番はなかなかないが、藤田健斗捕手(19)に注目している。

中京学院大中京(岐阜)3年春のU18代表合宿で現ロッテの大船渡・佐々木朗希投手の163キロを受け止めた時の捕手として一躍、有名となった。今季2軍では大卒5年目の長坂が正捕手としてマスクをかぶり、ドラフト4位栄枝も出番が多い。藤田は今季2軍公式戦は、ここまで28試合出場もスタメンマスクは5試合。打率1割3分9厘とまだ経験を積んでいる段階だ。

ルーキーだった昨春の2軍安芸キャンプに、別の担当だった記者は手伝いで初めて阪神の取材に行った。コロナ禍が本格化する前で対面取材ができた時期だ。私はあいさつし名刺を配り、名前を覚え、取材した。だが、私は藤田捕手に2度名刺を渡した。道具からちらりと「FUJI」と見え、育成の藤谷選手と間違った。「藤谷さん、よろしくお願いします」と渡すと、にっこり笑いながら「藤田です」。間違ったことに気づき赤面しながら謝罪する記者に「よくあることですから」と、優しく笑ってくれた。173センチの藤田と194センチの藤谷は身長差が20センチ以上もある。絶対、よくあるはずがない。舞い上がっていた記者のミスを受け止めた藤田の優しさがうれしかった。

五輪中断期間があった今季は夏場に練習試合があり1軍の機会も得た。8月4日のオリックスとの京セラドームでのエキシビションマッチで、藤田はこの日限定で1軍に呼ばれ、9回にマスクをかぶった。岩田稔とバッテリーを組んだが、3盗塁を許し3失点とほろ苦かった。翌日「もう少し粘っていけたかな。まず守れないとダメなので」と反省したが、貴重な経験となったはずだ。

8月28日の四国IL・徳島との鳴尾浜での練習試合では2安打を放ち「公式戦で使ってもらえる選手じゃない。チャンスは今日しかないと思って食らいつきました」と、少ないチャンスでアピールした。173センチと小柄ながらガッツがある。170センチと同じく小柄ながら、近鉄や阪神で活躍した1軍の藤井バッテリーコーチのように、頼れる捕手へ成長してほしい。【阪神担当=石橋隆雄】

ウエスタンリーグで中日に勝利し、連勝を16に伸ばし笑顔を見せる阪神平田2軍監督(2021年9月5日撮影)
ウエスタンリーグで中日に勝利し、連勝を16に伸ばし笑顔を見せる阪神平田2軍監督(2021年9月5日撮影)