<ソフトバンク3-1オリックス>◇10日◇ペイペイドーム

ソフトバンクが様変わりの秋を迎えようとしている。7年間、指揮を執った工藤監督が今季限りでタクトを置くことになった。まだシーズン10試合を残しているだけに、本人の口から退任の言葉は出るはずもないが、チームは新体制で2022年シーズンを迎えることになる。

過去6年間でリーグV3度。日本一5度という「王者」に君臨した。今季は主砲グラシアル、千賀、森ら相次ぐ主力選手の故障もあって春先から波に乗れなかった。巻き返しの後半戦を前にして新外国人レイの退団もあった。十分な戦力が整わなかったことも低迷の1つの要因だった。後半戦に入って球団側と進退について数回、話し合いの場を持ったが、退団の意思は固かったようだ。「V逸はイコール敗者」の孫オーナーの哲学もあるが、チーム低迷の責任とともに工藤監督には「今季限り」という思いがシーズン当初からあったように感じる。

選手のコンディション維持に細心の注意を払いながらも練習の妥協を許さないのが工藤流。長期政権の中で指導法のズレに工藤監督自身が違和感を感じ取っていたのではないだろうか。五輪中断中のランニングメニューはしっかり選手たちに課し、対戦チームの新たなデータも全選手に配布した。それでも振り返れば春季キャンプの練習メニューは例年よりも軽減されていたように思う。打撃面に関しては自らが招聘(しょうへい)した小久保ヘッドコーチに一任。次代のリーダー候補へ「禅譲」の気持ちを持ちつつ、シーズンを戦ってきたようにも思う。前面からグイグイ引っ張るのではなく、背後から見守るような指揮官の姿でもあった。敗戦後のコメントも「投手は打たれるもの。打者もいつも打てるものではない」と選手たちをかばった。10月に入っての大型連敗でも「野球は明るく、楽しく真剣に」の言葉を言い続けた。

残り10試合。いよいよ今工藤ホークスの「最終楽章」に入った。【ソフトバンク担当 佐竹英治】

ソフトバンク対オリックス ファンに一礼をする工藤監督(撮影・屋方直哉)
ソフトバンク対オリックス ファンに一礼をする工藤監督(撮影・屋方直哉)