3月25日に開幕した今年のプロ野球。BIGBOSSフィーバーで注目が集まる日本ハムの開幕投手に抜てきされたのは、ドラフト8位の北山亘基投手(22=京産大)だった。

ドラフト制度導入後に新人で開幕投手を務めたのは3人目だが、過去2人は84年にヤクルトのドラフト1位高野光、13年に楽天2位の則本昴大と前評判も高かった。

北山は昨年のドラフトで支配下指名選手77人のうち76番目の指名。高校時代は指名されず、4年越しのドラフトでも2時間近く名前を呼ばれなかった。指名された際には涙を流すほど苦労を重ねてきた右腕が、半年後に開幕投手としてマウンドに立つと誰が予想できただろうか。

当の本人はオープン戦が終わった後「指名後からいろいろとやってきたので、それが間違ってなかったんだと。1個1個の積み重ねの結果だと思います。ここまでの結果が出せたのは予想以上ですけど」と振り返っていた。

苦労人の北山を入団前から取材をさせてもらっているが、超がつくほどの真面目で、自己分析力の高さが印象的だ。ドラフト後に新庄監督の就任が決まった際には「僕は真面目と言うか、目立つパフォーマンスは得意ではないので、プレーで喜ばせられたら」と話していた。その言葉通り、開幕投手としてプロデビューを飾り、2回を無失点。不運な当たりなどもあってピンチを招いたが、得点は許さなかった。まさに最高のパフォーマンスを見せてくれた。

大学在学中から数多くの本やオンラインサロンなどを活用し、知識も豊富である。「野球以外の分野も、通ずるところがあるので、学んでいます」。情報過多にならないものかと気になったが「必要なものと、そうでないものを取捨選択するのは得意なので」と自信をのぞかせた。多田野2軍投手コーチは「いろんなことを知っていますよね。僕も知らないような道具を使ってトレーニングをしていたり。でも、それが何かを聞くと明確な答えを返して来る。こっちが勉強になるくらい」と舌を巻いた。

また、律義な性格も持っており、大学在学中には取材に訪れた担当者に、お礼のメールを送っていたほどだ。「取材に来てもらえるのは当たり前のことではないと思っているので感謝の気持ちです」。私にも「取材ありがとうございます。今後ともよろしくお願いします」といった内容のメールや、開幕投手が決まった際には「頑張ります」とメッセージもいただいた。とても応援のしたくなる選手だ。

そんな北山の目標は「長く現役を続けられ、ファンから愛される選手」。人柄もポテンシャルも申し分ない。プロとしての第1歩を最高の形で刻んだ新人右腕が、どんなパフォーマンスを見せてくれるか期待が尽きない。【日本ハム担当 小林憲治】