日本ハム郡拓也捕手(24)は少し寂しそうに言った。8日のイースタン・リーグDeNA戦(鎌ケ谷)で2本塁打を放った試合後のことだ。「みんなヒットを打っているのは知っていました。僕だけ“甲子園出てない組”。ちょうど置いてけぼり。今回も甲子園、置いていかれたって」と、苦笑いを浮かべた。

「みんな」というのは、母校の先輩トリオのこと。杉谷拳士内野手(31)、松本剛外野手(28)、石川亮捕手(26)を指す。そう、郡は帝京出身だ。

“甲子園出てない組”というのは先輩たちとの比較である。夏2度の出場経験がある杉谷。春夏3度出場の松本剛。松本剛が3年の時に1年生レギュラー捕手として夏に出場したのが石川亮で、その11年夏を最後に帝京は甲子園から遠ざかる。つまり郡は、17年3月に卒業した代だが、甲子園出場は果たせなかった。

「置いてけぼり」というのは高校時代のことだけでなく、3日から行われていた阪神3連戦のことも含まれる。開幕1軍入りを果たした郡だったが、4月16日ロッテ戦(ZOZOマリン)で右手親指を骨折。5月下旬に2軍で実戦復帰したが、甲子園で行われた交流戦での1軍再昇格は間に合わなかった。

「ヒットを打っているのは知っていました」というのは聖地での先輩たちの躍動のこと。甲子園ではなく、山梨・甲府での2軍戦に参加していた郡は試合後に結果を確認。5日の試合では6回に3人とも安打を記録していた。代打杉谷の二塁打、石川亮の右前打、さらに松本剛も右前打を放っていた。先輩たちの活躍、そして同世代の選手の躍動に早期の1軍復帰へ気持ちは突き動かされている。

「見たくないですけど、見ています。なんだかんだチェックしちゃうんです」と、1軍が気になる。今川、清宮、万波、野村ら若手の結果を見て「打ったらうれしいですけど、やっぱ悔しい気持ちもある」と、巻き返しの原動力に変えている。

「指は全然もう大丈夫です」と故障は癒えた。捕手だけでなく内外野のどこでも守れる超ユーティリティーさがストロングポイント。思いきりのいい打撃も魅力だ。甲子園での“帝京魂カルテット”の競演は果たせなかったが、1軍で先輩たちと躍動するために、そして同年代の選手に負けない活躍をするために、虎視眈々(たんたん)と力を蓄えている。【日本ハム担当 木下大輔】