<ソフトバンク2-7日本ハム>◇9日◇ペイペイドーム

炎暑の夏がやってきて「あの日」の思い出がよみがえってきた。もう33年も昔のことだが、あまりにも印象深かった。89年7月31日。高校野球の福岡県大会決勝。舞台は久留米球場だった。背番号「8」を背負った1番打者はサイクル安打を放ったが、チームは敗れて甲子園の土は踏めなかった。「最後の夏」は終わった。

「何で泣かないの?」。一塁側ベンチの隅に立っていたサイクル君に涙はなかった。記憶が間違っていなければ、笑顔だったと思う。いや、笑っていた。だから、そう聞いた。

「僕はやることは、やりましたから」。彼はそう答えた。泣き崩れるチームメートとは対照的に白い歯を見せて試合を振り返ってくれた。

33年後の夏。彼はBIGBOSSとなって地元福岡で連勝した。「鷹の祭典」と銘打ったソフトバンクの名物シリーズ。快勝にガッツポーズを繰り出すと、BIGBOSSは三塁ベンチに残って試合後のパフォーマンスに見入っていた。チームは最下位に沈んでいるが、相変わらずのポジティブさでタクトを振っている。

ホークスは痛い連敗を喫し対日本ハムは7勝7敗となった。開幕3連勝を飾り「新人監督対決」を圧倒したものの、気がつけば星勘定は並んだ。主力選手のケガやコロナ禍でチームコンディションが整わない苦しさはあるが、シーズンおしなべれば6球団とも同じような境遇だろう。この連敗で気になるのは対日本ハムの数字が悪いことだ。試合後の藤本監督も口にしていたが、14戦で18被弾。対戦防御率3・92は5球団で最低の数字となっている。前夜(8日)は追いつきながら延長戦で敗れ、2戦目は2点差を追いつかれ、終わってみれば5点差となる逆転負け。同じ条件でともに戦っていると考えるならば、選手不在を理由にはできない。【ソフトバンク担当 佐竹英治】

9日ソフトバンク戦の9回、野村の本塁打にガッツポーズする新庄剛志監督
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