今季の日本ハムは、新戦術を導入して挑んだ。中でも目立ったのは「ショートスターター」。18年に大リーグで浸透した、クローザーを1イニング限定で先発させる「オープナー」を改良した投手起用法だ。

日本ハムは先発タイプの投手を、3イニングもしくは打者一巡をメドに第2先発へ継投していく方法を編みだし、戦略的に開幕から積極的に実行。先発完投型の上沢、マルティネスが故障離脱したことで、全試合の約18%となる25試合前後で新戦術を採用した。

収穫も課題もあった。投手陣のリーダー、宮西がシーズン終了後に、的確に振り返っている。

宮西 メリットは先発の間隔が短くできる。1登板ずつ、マックスの力で投げ続けられる。先発は、へばってきたタイミングで甘くなった球を打たれる。そういうリスクは減る。主にショートスターターを担った加藤、堀、ロドリゲスらは打者2巡目、3巡目と被打率、失点率も高まる傾向があった。だから、立ち上がり時のボールの勢いが消える前に次の投手へスイッチする。机上では、隙のない投手起用プランと読み取れるが、現場では一筋縄ではいかなかった。

宮西 野球は流れのスポーツ。毎回交代するとリズムはなかなかできない。登板数も増える。先発の調整がしづらい面も、あるらしい。ショートスターターをするには、ある程度の決まり事を明確に決めないと大変だと、選手として感じる部分はあった。

試合も調整も、リズムをつかめなければ、当初の狙いである“長所を生かす”ことができない。

「決まり事を明確に」という指摘は、チーム内でゲームプランの共有が徹底できていなかった部分があったということ。ある主力野手は「先発が、ここで交代するんだと思ったこともありました。守備側にとっても、難しいですね。試合の流れが全然読めない状況もあった」という。首脳陣と選手が描く戦い方のイメージにギャップがあったことは否めない。チームが一枚岩になれず、真の強さにつながらなかった。

他球団でも、同様の戦術が採用されるケースはシーズン後半に多々見られた。先発完投型の投手が少なくなる中での有効策として認められた側面もある。極端な守備シフトもしかり、すぐに成否を判断できるものではないが、改善の余地は十分にある。

進取の精神は、日本ハムが育んできた文化だ。独自の戦い方をブラッシュアップし、来季以降の結果で示すしかない。(つづく)

【木下大輔】