中日は今季からアロンゾ・パウエル巡回打撃コーチ(56)を1軍打撃コーチ専任に配置転換した。DeNAラミレス前監督や、ロッテ・バレンタイン監督など外国人指揮官は多くいたが、巡回や特命ではない外国人の専任打撃コーチは珍しい。

「外国人が日本でコーチングをするのは、(通訳など)少しの調整がいる。でも僕は日本でも選手の経験がある。1軍の栗原、村上(巡回)、2軍の波留打撃コーチと協力して、選手たちの個々のレベルを上げたい」。通訳を交えながら、打者指導に取り組んでいる。

20年3月、練習を見つめる中日パウエル巡回打撃コーチ
20年3月、練習を見つめる中日パウエル巡回打撃コーチ

92年に来日して中日で6年間、主に主砲として活躍した。94年から外国人選手ではNPB史上初の3年連続首位打者に輝いた。中日は昨季両リーグ最下位のチーム得点429で得点力が課題だ。「三振の数を減らしたい。ポイントは狙っているゾーンをしっかり打って、ボール球を振らないことだ」。打者の攻撃力を表すOPS(長打率+出塁率)は一流と言われる9割以上の数値を在籍6年で4度記録。「選手は僕自身じゃないけど、僕が経験してきたこと、考え方は伝えられる。僕は外国人選手としてやってきて、OPSは高かった。OPSはすごく試合に響く」。選球眼を磨くことがチームの攻撃力アップに直結すると考えている。

春季キャンプでは、OBで臨時コーチの立浪和義氏に脚光が当たる。「立浪さんは賢いスーパースターだった。一番大事なのはコーチ陣がワンボイスで、選手が誤解しないように伝えることだ」。打撃練習や居残り練習で、選手がケージからマシン打撃、ティー打撃と場所を変えても、それぞれの場所を担当するコーチの指導内容は変わらない。パウエルの意見もあり、立浪が強化している京田、根尾らへの指導理論はコーチ陣で共有。ワンチームでの打力向上に努めている。

新型コロナウイルス感染拡大の影響で来日が遅れている新助っ人マイク・ガーバー外野手(28=ロッキーズ)は、パウエルの推薦で獲得。「パワーもあり守備もうまいし、走る選手だ。彼が日本に来たらグッドプレーヤーになるよ」。自身を招いたのは、現役時代から親交のある与田監督。かつての優良助っ人は、10年ぶりのリーグ制覇へ指揮官へのサポートを惜しまない。【伊東大介】

◆アロンゾ・パウエル 1964年12月12日生まれ、米サンフランシスコ出身。エクスポズ、マリナーズで活躍後の92年5月に中日入団。94~96年まで助っ人史上初の3年連続首位打者。98年に阪神に移籍しシーズン途中で退団。帰国後も米国で現役を続け、01年の引退後はマリナーズ、ジャイアンツで打撃コーチなどを務めた。NPBでは通算710試合出場、打率3割1分3厘、116本塁打、397打点。187センチ、115キロ。右投げ右打ち。