ロッテ佐々木朗希投手(20)を多角的に掘る「朗希を○○しよう」。最終回は佐々木朗の投球を時空を超えて歴史的な伝説の投球とデータで比べる。「朗希を測ろう」で、投球内容を可視化する。

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4月10日の完全試合達成の快挙が米国内でも報じられると「ゲームスコアで106点を記録した」と伝えられた。セイバーメトリクスの大家、ビル・ジェームズ氏が考案した投手が1試合で残した成績を可視化する指標だ。

◆ゲームスコアの算出方法

(1)50ポイントからスタート。

(2)アウトを1つ取ると1ポイント追加。(50+27=77)

(3)5回からは1イニングを投げ終えると2ポイント追加。(77+10=87)

(4)三振1つを奪うと1ポイント追加。(87+19=106)

(5)被安打1本打たれると2ポイントを減点。

(6)自責点1点につき4ポイントを減点。

(7)自責点以外の失点1点につき2ポイントを減点。

(8)四球1つを与えると1ポイントを減点。

カッコ内は佐々木朗の完全試合時の計算。9回で勝敗が決着すれば、満点は27奪三振で完全試合を達成時の114点となる。佐々木朗の能力を過去の偉人と比較することはできない。だが試合の完成度の高さを数字で比べることができる。

4月10日、オリックス戦で完全試合を達成してチームメートから祝福されるロッテ佐々木朗(右から2人目)
4月10日、オリックス戦で完全試合を達成してチームメートから祝福されるロッテ佐々木朗(右から2人目)

◆完全試合の完成度

プロ野球では過去に16人が達成。佐々木朗以前の“最高の完全試合”は広島の外木場義郎が遂げた68年9月の大洋戦。16奪三振で103点。“完全試合の内容度”では佐々木朗の方が濃い。過去23例あるメジャーの完全試合ではマット・ケーン(ジャイアンツ)とサンディ・コーファックス(ドジャース)の14奪三振による101点が最高。

◆MLB史上最高

メジャーの球団拡張後の過去最高は完全試合でもノーノーでもない。98年5月にケリー・ウッド(カブス)が1試合最多タイとなる20奪三振でアストロズを無四球完封した105点。160キロ前後の直球とカーブを武器に、課題の制球力(通算与四球率4・34、佐々木朗は1・88)がまとまっていた。佐々木朗同様に20歳時に高得点をたたき出した。

◆昭和、平成の怪物

令和の怪物と称される佐々木朗。昭和、平成の怪物投手の高校時代の伝説と比べる。作新学院の江川卓(元巨人)の甲子園でのベストスコアは73年のセンバツ大会準々決勝今治西戦。8者連続を含む計20奪三振で許した走者は1安打1四球のみで104点だ。横浜高の松坂大輔(元西武、レッドソックスなど)は98年の3年夏の決勝、京都成章戦でノーヒットノーランを達成した。3四球を与えたが、PL学園との延長18回の熱投など、大会で782球を投げ抜いたことを踏まえれば95点は立派な数字だ。

佐々木朗は甲子園には届かなかった。自他ともに認める高校時代の最高試合は3年春の作新学院との練習試合。3回6奪三振で1安打1四球1失点。ゲームスコア自体は60点と平凡だ。だが最速156キロのポテンシャルを示し、対戦した相手、視察した日米スカウト、そして観戦した野球を愛するファンすべてが近未来の成功を思い描いた。

6日、佐々木朗は今季6戦目のマウンドに立ち、64点。また佐々木朗の偉業に続きかけた中日大野雄は95点だった。目で見る楽しさと同時に、数字でも測ってみよう。【広重竜太郎】

(この項おわり)