田村藤夫氏(62)が3年連続で、フェニックスリーグ(宮崎)を現地からリポートする。リーグ連覇を果たしたオリックスの「底上げ」に着目した。

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オリックスの育成が明確な狙いをもって先に進んでいる印象を受けた。

15日のオリックス-日本ハム戦では、オリックス野手の大半がルーキーだった。大卒組は野口(ドラフト2位)、福永(同3位)、渡部(同4位)、大里(育成3位)、社会人出身の山中(育成1位)、そして高卒の池田(ドラフト5位)。DH福永を含め6人が先発。さらに投手で大卒横山(同6位)も登板し、育成を含めたルーキー全10選手のうち7人が出場した。

これはたまたまかもしれない。ファームを中心に取材してはいるが、特定球団の定点観測はしていない。この試合が偶然にそうなっただけかもしれない。情報不足と言われたら返す言葉はないが、その上で私には感じたことがある。

オリックス池田陵真の打撃フォーム(22年7月1日撮影)
オリックス池田陵真の打撃フォーム(22年7月1日撮影)

高卒、大卒、社会人出身とキャリアに差はあるが、同期入団の野手6人が、この時期に同じ試合に出場する。育成面での狙いを感じる。まず、首脳陣からすれば、この1年で個々の選手の成長具合を確認できる。ドラフト後に把握したレベルを、1年プロで過ごし再度チェック。これは、私には今までなかった発想だ。

また、選手にとっては大いなる励みになるだろう。高卒の池田からすれば、バッティング技術の違いや自信のある部分を、社会人出身や大卒野手と試合の中で比べられる。刺激にもなり、自分の現在地を知る。

さらに、育成契約の選手からすれば、同期の支配下選手と同じ試合の中でアピールする動機づけになる。1年間の仕上げの点検という視点も含め、興味深い事例と感じた。

プロ野球評論家の田村藤夫氏(19年12月26日撮影)
プロ野球評論家の田村藤夫氏(19年12月26日撮影)

おのおのがどういうところを参考にするか、具体例を池田で説明しておく。第1打席はボール、ボールから3球目内角スライダーでストライク、4球目内角ストレートを空振り。カウント2-2から5球目の外角ストレートを、しっかり踏み込んで右翼へ二塁打。

3球目、4球目に内角でストライクを奪われ、内角に意識が残る中、外のボールに対応し、手打ちにならずにしっかり腰を入れたスイングに対応力を感じる。このバッティングを高卒で5位の池田に見せられれば、大卒組や社会人出身の山中には、これ以上ない発奮材料になるだろう。

非常に新鮮に映ったため、いいところばかりが浮かんだ。この取り組みがどんな効果を生むのか、今後も機会があればリポートしていきたい。(日刊スポーツ評論家)