「指名を待つ男たち」の最終回。それぞれの世代の侍ジャパンで日の丸を背負って戦った「世界を知る選手」を取り上げる。今年7月の日米大学野球選手権で、米国開催では07年以来16年ぶり2度目の敵地Vを成し遂げた大学日本代表内野手の経験と思いを聞いた。

ドラフトファイル:辻本倫太郎
ドラフトファイル:辻本倫太郎

仙台大・辻本倫太郎内野手(4年=北海)は昨夏にハーレム・ベースボール・ウイーク(オランダ)、今夏は日米大学野球選手権(米国)で世界を経験した。大学日本代表に選出され、世代トップクラスの選手と過ごした日々は「貴重な時間だった」と振り返り、今後の野球人生に生かしていく。

昨夏はチームの1学年上に中大・森下翔太外野手(現阪神)、慶大・萩尾匡也外野手(現巨人)といった、後にプロの世界へと進む選手が在籍。4番で起用され、試合中は声を出してチームを鼓舞した萩尾の姿が印象に残っている。「素振りをしていても、『ここがダメだからこう思うんだよね、どう思う?』と。確実に自分より打撃面ですごい選手なのに、いろいろな人に意見を求めていることがすごい」と、研究熱心な姿勢に驚かされた。

今夏の同選手権は2大会連続20度目、敵地開催では16年ぶり2度目の優勝を果たした。「ずっと優勝を目標にやってきた。歴史的快挙のメンバーの一員になれたことは本当にうれしい」。同大では遊撃を守るが、二塁や三塁での起用は「(3年の)オランダでもサードで出ていた。いろんなところを守れるのは自分の強み」と苦に感じていなかった。

一方で打撃は、高いリリースポイントで投げ込まれる力強いボールを捉えられず、9打数無安打4三振。それでも4年秋のリーグ戦前に「アメリカのいいピッチャーと対戦して帰って来たので、気持ちの面は余裕になった」という。今秋はライバル校・東北福祉大にリーグ3連覇を阻止されたが、自身初の最多打点賞を獲得。168センチと小柄ながら2本塁打のパンチ力と勝負強さを発揮し、主将としてチームを引っ張った。

仙台大・辻本倫太郎(2023年6月18日撮影)
仙台大・辻本倫太郎(2023年6月18日撮影)

3月のWBCはテレビで観戦し、侍ジャパンが活躍する姿に刺激を受けた。「準決勝のサヨナラ(勝ち)は見ていて、すごく気持ちも盛り上がった。野球を頑張ろうと思った」。同じユニホームに袖を通し、世界での学びや歓喜した瞬間を忘れずに高みを目指す。「自分もプロの世界に入って、日本を代表してトップチームで活躍するような選手になりたい」。今日26日、野球人生を大きく左右するドラフト会議が行われる。静かに指名を待ち、大きな目標に近づく第1歩を踏み出す。【相沢孔志】(この項終わり)