元ロッテの里崎智也氏(野球評論家)の「ウェブ特別評論」を掲載中。52回目は「12球団戦力分析~パ・リーグ編」です。

 セ・パを2回に分け、12球団の攻撃陣、投手陣の戦力を花丸、◎、○、△、×の5段階で評価し、キーマンを挙げた。

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 すでにメディアでも予想しているが、あらためて今季、私のパ順位予想は(1)ソフトバンク(2)楽天(3)オリックス(4)西武(5)日本ハム(6)ロッテとなった。各球団の戦力を攻撃陣、投手陣をもう少し追って見てみる。

【ソフトバンク】攻撃=花丸、投手=花丸

 高いレベルで先発枠争いをしているソフトバンク投手陣は、開幕枠の6人から漏れた選手でも他球団では先発ローテに食い込むのでは、と思わせてくれるほどの実力者ぞろい。若手も田中正義、石川ら順調に成長してきた。セで群を抜く広島よりも盤石の戦力ではないかと思う。3月上旬に行われたオーストラリアと侍ジャパンの強化試合で、代表メンバーに最多となる7人を送り込み、目立っていたのもソフトバンク勢だった。流動的なポジションは二塁と右翼だが、右翼は上林が頭角を現しており、今季にも定位置の座を安定したものに変えそうな勢い。二塁が本多、高田、川島の併用策かと思われるが、それを除けば計算できるレギュラーがそろっている。加えて一塁以外どこでも守れるユーティリティ-・グラシアル内野手をキューバから獲得。補強策も抜かりがない。

<キーマン>

 甲斐を挙げたい。高谷が離脱し開幕メンバーの捕手登録は堀内と2人。基本、甲斐1本だと思われる。昨年高谷がバッテリーを組むケースの多かった和田、バンデンハークらも甲斐がコンビを組むだろう。今季の成績次第で、侍ジャパンのレギュラーを不動のものとすれば東京五輪の正捕手もグッと近づく。

【楽天】攻撃=◎、投手=◎

 投手では藤平、野手では内田ら若手も育ってきた。数年前にドラフト上位で指名した若手も軒並み成長し、いい形でチーム作りが進んでいる。打線はペゲーロ、アマダー、ウィーラーら外国人頼みは否めない。ソフトバンクと比較すると選手層が若干薄いだけに、けが人さえ出なけば面白い。昨年はけが人続出で夏場以降、落ちていった感があったが同じ轍を踏まなければ。投手陣は岸に2桁は勝ってほしい。則本とダブルエースで30勝は稼ぎたい。

<キーマン>

 岸。打線の援護が弱くても最低10勝は勝ちきらないと。岸は昨年8勝に終わり、ここ3年間2桁勝利がない。厳しいローテで回っており力投しながら勝ち星に恵まれないケースもあった。が、どんな相手でもチームに勝ち星を持ってきてこそのエースだ。

【オリックス】攻撃=○、投手=○

 金子、西、山岡、ディクソン、新人田嶋と先発のコマがそろってきた。平野に代わる抑えもFAで増井を獲得した。打線は、けががなければ30発期待できる吉田正尚、リードオフマンの宗も期待できる。「個」の能力値は高いが、組織としてどう「個」を活かすか。ベンチワークの差配も重要。昨年103試合で26本塁打のロメロ、同82試合で20発のマレーロがフルシーズン戦えれば、かつて猛威を奮った「ブルーサンダー打線」も復活する

<キーマン>

 国産大砲として期待値大の吉田正尚。本塁打を打つ能力は素晴らしいが、16年が63試合、17年が64試合とけがでフルシーズン戦った経験がない。けがなくシーズン送れるか。

【西武】攻撃=花丸、投手=△

 打線は山川、メヒア、浅村、おかわり君(中村)、森、浅村、秋山…とすさまじい。12球団トップクラスの強力打線は誰もが認めるところ。問題は投手陣。牧田、シュリッターの抜けた穴は大きい。オープン戦6試合4回3分の2を投げ、防御率0・00の高橋朋己が中継ぎでハマるか。特に牧田の穴が大きすぎるが中継ぎをどう整備するか。

<キーマン>

 高橋朋己の復活は上位進出に欠かせない。以前のイキのいい投球が戻り、牧田、シュリッターの穴を埋められるか。

【日本ハム】攻撃=○、投手=△

 大谷、大野奨太、増井と主力級が3枚抜けた。昨年も終盤は、若手を起用し、我慢して育成に注力していた印象がある。独自のチーム戦略があり開花する時期は数年先か。抜けた穴はディフェンス面でのマイナスが大きい。打線はレアード、中田翔、近藤、西川、中島とタレントはいる。まずは増井の抜けた抑えをどうするか。

<キーマン>

 中田翔。昨年は129試合に出場し打率2割1分6厘、16本塁打、67打点は少し寂しい数字。タイトル取るくらいの活躍ができればレアードの負担も減る。ムードメーカーの1人だけに中田が打つか打たないか、チームが乗っていけるかのキーマンとなる。

【ロッテ】攻撃=△、投手=△

 井口新監督の1年目だが、現実は厳しい道のりとなりそうだ。補強選手もオープン戦を見た限りでは機能しておらず、今のチーム状況なら3年目でAクラス、5年目で優勝の長期計画でチームの土台作りに汗を流す時期か。鈴木は計算できるが、4番候補の角中、清田が開幕メンバーから外れた点も不安要素。ルーキーの藤岡裕、菅野らを含め新戦力に頼らざるを得ないチーム状況。

<キーマン>

 石川の復活に期待したい。昨年は3勝に終わったが、エースがこれでは苦しい。涌井と合わせて25勝はほしい。石川が15勝ぐらい勝って助っ人が活躍してくれればAクラスも見えてくるが。

 ◆里崎智也(さとざき・ともや)1976年(昭51)5月20日、徳島県生まれ。鳴門工(現鳴門渦潮)-帝京大を経て98年にロッテを逆指名しドラフト2位で入団。06年第1回WBCでは優勝した王ジャパンの正捕手として活躍。08年北京五輪出場。06、07年ベストナインとゴールデングラブ賞。オールスター出場7度。05、09年盗塁阻止率リーグ1位。2014年のシーズン限りで引退。実働15年で通算1089試合、3476打数890安打(打率2割5分6厘)、108本塁打、458打点。現役時代は175センチ、94キロ。右投げ右打ち。