「コロナウイルスは“なしだ”」
「回復力が“まさったか”」
新型コロナウイルスに罹患(りかん)した梨田昌孝氏(日刊スポーツ評論家)が20日、無事に退院した。その日、梨田氏をよく知る球界関係者との間で交わしたメールだ。
近鉄、日本ハム、そして楽天の監督を務めた梨田氏は大のダジャレ好きで知られる。関西にはそういうおじさんは結構多いので、正直、近鉄時代などはさほど意識していなかった。
しかし日本ハム、楽天で指揮を執り、メディアがその傾向を取り上げられるようになって「そう言えばそうやったな。確かに」とあらためて思った。
15年12月に行われた楽天の新入団会見で当時、監督だった梨田氏はこんな感じで飛ばした。
ドラフト1位のオコエ瑠偉に「ドラフト1位で“お声”を掛けさせていただき」。3位の茂木栄五郎には「レギュラーを“もぎ”取るように」。そして5位の石橋良太には「練習を“イシバシ”やって、みなさんから愛されるような選手になってもらいたい」。
旺盛なサービス精神の表れだが同時にダジャレを連発する理由、効果についてこう話したこともある。
「笑うと場が和むじゃない。そして1度笑わせると『次も何か来るんじゃないか』と思って準備をするでしょう。アンテナを張るよね。それが野球に生きる。例えば配球。自分とタイプの近いバッターに対して変化球が多いとかインコースが多いとか。常にそういう準備をするようになる」(16年1月9日紙面)
そんな梨田さんが新型コロナ・ウイルスに感染したのは4月1日だった。あんなに元気な人が。エイプリル・フールではないのか、と思った。一時は人工呼吸器をつける状態と聞き、心配していた。
それでも持ち前の体力、医療関係者の尽力で無事に退院。少しだけメールをかわしたが周囲への感謝の気持ちを強調されていた。
夏の高校野球が中止になるなど世の中は元気をなくすことばかりだ。コロナ禍では亡くなった方々も多く、深刻な問題である。それでも生きていればつらく苦しいことでもダジャレで笑い飛ばすような気概が人生には必要だ、と思う。
「心配かけたけど、そろそろ治る“ころな”」
再び元気な梨田氏に会えば、ひょっとしてそんなことを口にされるのでは、と思っている。