野球を取材する立場になって30年近くたつのですが初めて甲子園で取材をした人物は野球選手ではありません。

それは「マッチ」こと近藤真彦さんでした。近藤さんが長く在籍したジャニーズ事務所を離れたというニュースに接し、約30年前のことを思い出しました。

現在でも続いているようですが「ジャニーズ野球大会」というものがあります。はっきりした年は忘れてしまいましたが、あれは90年代初頭だったでしょうか。甲子園で行われた同大会の取材をしたのです。

88年の入社以降、6年ほどは社会情報、芸能ニュースを取材する部署に配属されていました。とはいえ大阪在住。普段はジャニーズ事務所のタレントを直接、取材する機会はほとんどありません。難しいかな? と思っていましたが驚くほどスムーズに話を聞くことができたのです。

近藤さんはその試合で先発投手を務めました。子どもの頃は熱心な野球少年だったそう。「きょうはカーブがよくなかったですね」などと真剣な表情で言ったように思います。会話がはっきり思い出せずに申し訳ないのですが、その取材をベンチに近いところで行った記憶だけは明確に残っています。

スタンドから送られる「マッチ!」というファンの声援が迫力満点でこわいほどだったことを覚えているからです。本当に体中にズシンと響く感じでした。「アイドルはいつもこんな声にさらされてるのか。すごくタフだな」と、妙に納得したものです。

もう1つ、記憶が鮮明なのが近藤さんの態度がよかったことです。売れっ子っぽい高慢さはまるでなく、とても率直に話をしたのを覚えています。のちに近藤さんが出場したレースを取材する機会もありましたが、そこでも同様でした。

「ジャニーズ」というのは少年野球のチームが始まりだそう。だからか中居正広さん、亀梨和也さんら野球好きの人が多いのか、と思ったりします。

今後、近藤さんは同事務所を離れて活動するそう。「野球好きにワルいヤツはいない」などとは言いませんし、最近の芸能界のことも分からないのですが、なぜか忘れられない甲子園での出来事。同世代として今後も注目したいと思っています。【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「高原のねごと」)