プロ野球を取材、コラムを書く仕事をさせてもらっていて「ありがたいな」と感謝することは少なくないのですが、毎年、沖縄にキャンプ取材で沖縄に行けるのもその1つです。

人それぞれ好みもあるでしょうが本土などから訪れる人間にとって沖縄は格別な場所。1度、足を運べば何度でも行きたくなるのでは。観光目当て、食事というより“流れる時間”がどことなく違う。それが沖縄の不思議な魅力だと感じています。

そんな沖縄を強く愛したのは闘将・星野仙一さんでした。中日、阪神、楽天で監督を務め、それぞれを優勝に導いた星野さんは沖縄が好きでしたが、それ以上に感謝していました。

「プロ野球全体がどれだけ世話になってるんや! こんな恵まれたキャンプ地は日本で他にないやろ。沖縄は日本のフロリダや!」

03年の阪神担当キャップ時代、大リーグのキャンプ地になぞらえたこんな話を耳がタコになるほど聞かされました。

その沖縄が第2次世界大戦後の米軍統治から日本に返還されたのが1972年(昭47)5月15日です。小学3年生でしたが当時、新聞やテレビで大きく報道されていたことは記憶に残っています。

復帰後、49年が経過しましたが憧れの土地であると同時に、米軍基地による問題は耐えません。そこに加え、中心産業である観光業はコロナ禍に見舞われています。

今年2月のプロ野球キャンプ自体、無観客での開催でした。来年の復帰50周年も晴れやかに迎えられるかどうか、という不安も地元にはあるようです。

そこで思うのはプロ野球として何かをできないか、ということです。ズバリ言えば復帰50周年を迎える来年5月には全12球団が沖縄で公式戦を行うなどの記念行事ができないものか、と思います。

もちろんコロナ禍の行方に大きく左右されます。それでもワクチンの普及などで誰でも自由に旅行ができる状況になっていれば。キャンプでほとんどの球団がお世話になっている沖縄の記念すべき年に、球界としてもそんな試みを行ってくれればと思うのです。【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「高原のねごと」)

35年ぶりに沖縄でプロ野球の公式戦、横浜対ヤクルトが開催され、大勢のファンが開門を待ち長蛇の列をつくった(10年6月29日)
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