日刊スポーツに勤めて35年目ですが、サッカーは過去にガンバ大阪の取材を手伝ったぐらいで門外漢。今でも正直言って代表戦ぐらいしか見ませんが、それでもサッカーW杯のドイツ戦は興奮しました。

ドイツが「日本サッカー界の父」であるのは知っていましたし、強豪国であるのも承知していました。善戦すればいいかなと思ってテレビ中継を見ていましたが、守勢一方だった前半と変わって、攻めまくった後半戦は素晴らしかった。日本国民であることを誇らしく思った時間です。

その日本代表を率いる森保一監督について、過去にある企画が持ち上がったことがありました。内輪の話ですが15年オフ、広島カープの監督として1年目を終えた緒方孝市氏(日刊スポーツ評論家)と森保監督の対談はどうだろうかという話をカープ担当と相談したのです。

森保監督はその15年、サンフレッチェ広島を率いてJリーグ優勝を果たしていました。それも12、13年に続いて実に3度目の栄冠です。そこで期待の大きかった1年目をBクラスに沈んだ緒方監督と対談してもらおうかという話でした。

緒方氏も乗り気でした。ともに広島をホームにするチームで長い現役生活、さらに指揮官を務めるという共通点がありました。さらに68年生まれの同学年。1年目を終え、立て直しに懸命だった緒方氏は「話を聞かせてもらう機会があればありがたいですね」などと話していたものです。

結論から言えば、ともに多忙でスケジュールが組めず、その話は流れました。残念でしたが、その後、あまり知らないサッカーの世界で森保監督の動向は意識するようになったものです。そして緒方氏率いるカープは16年から球団史上初の3連覇を達成。くしくも森保監督同様に3度のリーグ優勝に導いたのです。

繰り返しますが、森保監督と緒方氏は同い年。これを球界に照らし合わせると面白いことが分かります。今季、悲願の日本一を果たしたオリックス中嶋聡監督、さらにセ・リーグ連覇を果たし、2年連続日本一に挑戦したヤクルト高津臣吾監督も68、69年生まれの学年です。「この学年の監督はキテいる!」。そんなことを思いたくなるのです。

もちろん、日本のプロ野球で優勝することと世界的人気スポーツのサッカー、その頂点であるW杯で勝ち切るのとでは、大きな違いがあるのは言うまでもありません。

さらにいかにドイツ撃破とはいえ、まだ1勝しただけ。そこで「優勝」という言葉を持ち出すこと自体、気が早過ぎるのですが、それでも、なんだか期待したくなるのです。

とにかくW杯は日本国民みんなが応援できるイベントでしょう。普段はサッカーを見ない野球ファンも、ここは気持ちをひとつにして日本代表を応援したいものです。【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「高原のねごと」)

日本対ドイツ 後半、同点ゴールを決め、森保監督(左)と喜び合う堂安(2022年11月23日撮影)
日本対ドイツ 後半、同点ゴールを決め、森保監督(左)と喜び合う堂安(2022年11月23日撮影)
日本対カナダ 前半、大声で指示を出す森保監督(22年11月17日撮影)
日本対カナダ 前半、大声で指示を出す森保監督(22年11月17日撮影)