派手な見出しが並ぶ。「ノイジー、大爆発!」。5月18日付の関西のスポーツ新聞だ。17日の中日戦で、新外国人、ノイジーが連夜の大活躍。不振時がウソのようなバッティング、だが、その裏で監督、岡田彰布のタイムリーな助言があったとか。

「もっとリラックスして打席に立て。硬い、硬い、力を抜いて」。たったそれだけだったが、監督自らのアドバイスに、ノイジーはハッとして、気が付いたという。

岡田と外国人選手…。あまり取り上げられることはなかったが、その時々で岡田は目立たぬ気配りを施してきた。現役時代はバースやパリッシュを食事に誘い、日本の考え方を丁寧に伝えた。英語が堪能な妻・陽子が同席しての宴席は、彼ら外国人選手にとっては有意義な時間だった。

2003年にはこんなエピソードが残っている。優勝に進んでいた、このシーズン。調子を落としていたアリアスは遠征先のホテルで、夜中、岡田の部屋を訪ねた。この時、岡田は内野守備走塁コーチ。「バッティングについて教えてほしい」とアリアスがすがってきた。岡田はどうしたか。まず島野ヘッドコーチに連絡した。時の打撃コーチは田淵幸一。もし教えれば越権行為にあたる。

「力になってくれ。田淵にはオレから説明しておく」。島野の許可を得て、アリアスに気になることを助言した。なぜアリアスは担当外の岡田に相談したのか。「チームメートに聞けば、岡田さんは的確なアドバイスをくれると…」。そこからアリアスはよみがえり、優勝に大きく貢献した。

やさしいばかりではない…というエピソードは2010年にあった。岡田はこの年からオリックスの監督に就任。その開幕戦、4番カブレラを先発から外したのだ。理由があった。岡田は他の選手との兼ね合いでカブレラを4番DHで起用するはずだったが、カブレラが拒否。「守りたい」と4番一塁を強く希望。まったく譲る気がないので、岡田は「それなら外す。ゲームに出なくていい」と、メンバー交換直前、カブレラ外しに打ってでた。

「あれはわがまま。それを許せばチームに悪い影響を及ぼす。それは4番であっても、同じよ」。毅然(きぜん)とした態度を貫き、カブレラが謝罪することで、問題は解決した。

「そら大変よ。新しい外国人選手が日本の野球に慣れるのはそう簡単なことではない。まず、それをわかってやることよ。でもな、配慮はするけど、わがままというか、規律を乱すことは許さない」。外国人選手との間には相互理解が必要と岡田は力説してきた。それが構築できて、信頼関係が強くなる。岡田の外国人選手に対する接し方に、ブレはない。

今回のノイジーにしても、岡田は彼の取り組み方をずっと見ている。「いいかげんなところがない。何とかしたいという気持ちにあふれている。日本の野球をナメていないし、成功したいという気持ちがホンマ、伝わってくるからな」。こういう選手を何とかしたい。それが先日の短い助言に示された。

あとひとりの外国人選手、ミエセスに対してもそうだ。バッティングでも守りでも、懸命な姿勢を続けている。「あれを見てるとなあ…。何とかなあ、結果を出させてやりたいものや」とやさしく笑う。

そういえば岡田はミエセスのことを「ミエちゃん」と呼ぶ。親しみを込めた呼び方だが、これまで「〇〇ちゃん」と外国人を呼んだのはひとりだけと記憶している。それはオリックスの監督時代、韓国の大砲、イ・スンヨプだった。「スンちゃん、スンちゃん」と呼び、スンヨプもまた岡田を信頼していた。「岡田さんにはお世話になった。感謝している」という言葉を残している。

ノイジーに3番でやっていけるメドがついた。ミエセスには「何かキッカケがあれば、大化けする。その可能性を秘めたバッターよ」と、これからの様変わりに期待は大きい。岡田と外国人選手、掌握術と操縦法に注目である。【内匠宏幸】

(敬称略)