<イースタンリーグ:DeNA2-3ロッテ>◇3日◇横須賀

2軍戦から注目選手を見いだす田村藤夫氏(62)は、DeNAのドラフト6位、大卒1年目の梶原昂希外野手(22=大分雄城台-神奈川大)のバッティングをじっくり観察した。

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5番レフトで出場していた梶原を見て、真っすぐへの対応に課題があると感じた。5打数1安打。ロッテ先発広畑の最速148キロの真っすぐを捉え切れていない。第1打席、第2打席ともに、真っすぐにバットのヘッドが出てこず、追い込まれてからフォークで空振り三振を喫した。

広畑の球質が良かったという側面はある。そして、この日の梶原のバッティング状態が良くなかったのかもしれない。この試合での打席を見る限り、梶原はプロの真っすぐへの対応に、まだ確固たる自信を抱けずにいるのだろうと推測した。

真っすぐにタイミングが合っているかどうか、捕手目線から測るには2タイプある。タイミングは合っているがファウルになるケースと、やや差し込まれてバットが遅れ気味になってのファウルがある。梶原のこの日のスイングを見ていると、バットがボールの下を通っている。差し込まれてのファウルだったと感じた。

バッターは順を追って成長していく。いきなりプロのボールに順応できる打者もいれば、時間をかけ段階を上り、自分のスイングにたどり着く場合もある。どちらが優秀かということではなく、「技術に裏打ちされたバッティングをマスターして、打つべくして打つ」、そういう打者に育ってほしい。

この日の打席では、ファウルはいずれも左翼線側へ飛んでいた。これが右翼線側へ引っ張れるようになると「打席の中で修正しつつあるな」と、捕手としては警戒感が強まる。同じように左翼線側へ飛んでしまうところに、梶原の現時点での力量が見えてくる。

それでは、修正するとはどういうことか。おそらく梶原は「ここだ」というポイントでスイングをしている。しかし、広畑のボールは梶原の予測よりも伸びている。ホップするという表現はあるが、実際はホップすることはない。初速からイメージする終速よりも、広畑の終速が落ちないため、梶原のバットがボールの下を通ってしまうという図式になっている。

梶原の感覚の中で、もう少しバットの軌道を上げてみよう、もしくは広畑の真っすぐのイメージを少し変えてみようと思うことができれば、同じファウルでも飛ぶ方向は変わってくる。それが修正するということにつながる。

私が捕手として梶原と対戦していたと仮定して、梶原のファウルが右翼線側へ飛び出したとなったら、「合ってきたな」と考えるようになる。言い方を変えれば、ミートポイントが捕手に近かったものが、若干でも前でとらえるようになることで、ヒットゾーンに打たれる確率が高くなると考える。

左打者が引っ張り、右翼線側へファウルが飛ぶようになれば、バットのヘッドが出てきたということになる。こうなると、バッテリーとしては、また梶原のバッティングを崩すように緩急をつける、内角を起こしてから外角に変化球を投げるなど、次の対応を取ることになる。この日の広畑との2打席の中で、梶原にこうした修正を感じる瞬間はなかった。しかし、その修正こそが1軍レベルへの成長階段の重要な部分になる。

今のヤクルト村上のバッティングを見れば、ファンの皆さんもよく分かっていただけると思う。打ち損じがほとんどない。甘い球をほぼ確実にヒットゾーンに打っている。これが強打者の実力ということだ。

梶原にも修正するということに少しずつ取り組み、1つずつ階段を上ってほしい。第3打席では左投手からヒットを奪っている。真っすぐの後、外のスライダーをうまく拾ってライト前に運んだ。追い込まれた中で、いい内容のバッティングだった。

梶原は左打者。やはりまずは右投手のある程度球威があるボールを捉えること、修正して捉える確率を高めることに取り組んでもらいたい。「ここだ」と思ってスイングしたバットの軌道とボールの位置を感じ、次にどうすべきか打席の中で考えいろいろ試してみることだ。もちろん最初から正解のスイングができるわけではない。だが、打球方向は重要なデータだ。さらにバットの芯で捉えたかどうかは、梶原がもっとも感じることができる部分だ。「修正する」「対応する」、こういう部分を大切に、日々の試合でいろんなトライをしてほしい。

守備では左中間寄りの打球に追いつき、落ち着いて二塁に正確に送球し、打者走者を刺した。冷静なプレーだった。ベンチに戻り、声をかけてくれた選手に丁寧に頭を下げる姿は、大卒1年目の初々しさがあった。

既に1軍デビューしており、ホームランも記録している。プロとしてのキャリアは始まったばかりだ。根拠ある自信を身に付け、再び1軍に昇格できるよう、内容をどこまでも追求してもらいたい。(日刊スポーツ評論家)