野球の神様は見放していなかった。

 11日の明治神宮大会。九州共立大は名城大とのシーソーゲームをサヨナラ勝ちで制したが、最後の1点を呼んだのは望月涼太内野手(4年=東大阪大柏原)だった。

 9回1死満塁で投手強襲の適時内野安打。「勝ちたいって気持ちだけで最後いきました」。執念の一打に爽やかな笑顔を浮かべた望月だが、約2週間前のあの瞬間は表情を失っていた。

 望月は今秋ドラフト有力候補と目されていた。テレビの特番も望月と家族を追いかけた。だが、ドラフト当日まさかの指名漏れ。「頭が真っ白だった」…。特番の最後、テレビ越しに出演者の元ヤクルト古田敦也氏がかけた励ましの言葉も、その時は耳に入らなかった。ドラフト後、テレビを見た周囲の人からたくさん声を掛けられた。「いい意味でも悪い意味でも注目されている。ああいう経験をするのも、なかなかない。(特番内で指名に)かかっていないのは自分だけ。感謝すると言ったらおかしいですが…」。

 家族も望月を前向きにさせてくれた。ドラフト後、両親から電話をもらった。「しっかり2年後を目指して頑張れ。自分たちは大丈夫だから」と言ってくれた。「両親が一番苦しかったと思う」。思いをくみ、前を向いた。

 大学卒業後の進路は東芝に決まった。苦しい瞬間が映し出されているはずのテレビの特番も最初から見直したという。「いろんな方から『古田さんも言ってたけど…』と言われて。(古田さんからエールを)言ってもらえて、ありがたいです」。2回目はしっかり胸に刻んだ。

 見直した後、望月は両親に電話した。「ごめん。もう1回頑張ろうと思ってる」。2年後、チャンスはやってくると信じている。【アマ野球担当=磯綾乃】

(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「野球手帳」)