野村克也さんの名言に「心が変われば人生が変わる」がある。正確には「心が変われば態度が変わる。態度が変われば行動が変わる。行動が変われば習慣が変わる」と続いていき、最終的に「人生が変わる」で締められる。個人的には、人生を変えるには心で思うだけでは足りなくて、やはり行動が必要、と受け止めている。

国学院大・鳥山泰孝監督(45)は、正しく行動している人だ。3位に終わった今秋リーグ戦後、東京6大学の名門・慶大に頭を下げた。週末に計4試合のオープン戦を組んでもらったが、3敗1分け。特に、お互いレギュラーで臨んだ初戦は、1-10とこてんぱんにやられた。「最初は試合だけの予定でした。慶応の投手陣の育成を勉強させてもらいたかった。ですが、打力もすごかった。お願いして、意見交換会を開いてもらいました」。両チームが室内で車座になり、1時間にわたり、この冬に意識していることを語り合った。

鳥山監督の意図を察した慶大・堀井哲也監督(58)は、慶大の新主将である福井章吾捕手(3年=大阪桐蔭)に進行役を務めさせた。同じ新主将で、同じ捕手の国学院大・福永奨捕手(3年=横浜)は感銘を受けた。「福井はセンバツで優勝し、自分にないものがある。まとめる力がすごい。自分もそうならないと。自ら行動することで、下もついてくる」と、野村さんの言葉のように行動の必要を痛感。リーダーとして引っ張っていく覚悟を固めた。

その覚悟を引き出したのが、他ならぬ鳥山監督の行動ということになる。去年は、投手の育成に定評がある日体大に、投手陣の合同練習をお願いした。先日は自らENEOSに足を運び、復帰1年目で都市対抗出場を果たした大久保秀昭監督(51)に話を聞いた。

こっちの方が年齢は下としても、監督という立場は変わらないし、慶大や日体大とは同じ大学野球。頭を下げて学ぶ-。変なプライドが邪魔すれば難しいのではないか。「プライドがあるほど、実績はありませんから。優勝もしてないし、危機感しかありません。いつまで、あと1歩を続けるんだと」と明快に即答された。正確には、就任直後の10年秋、東都1部で初優勝している。ただ、11年春に2部降格。12年秋からは1部で戦い続けているが、3季連続を含め2位が5度。惜しいシーズンが多い。

「戦国」とも呼ばれる東都で、10年近く1部を続けるのは大変なこと。それでもやはり、優勝していない危機感がある。

主力は4年生が多かったため、来春は投手、内野手は横一線からのスタート。鳥山監督は「チームに上乗せが必要。勉強するしかありません。指導者は現場を離れる勇気を持たないといけない」と力説する。過去には、医学セミナーにまで参加した。

手帳には「進化」と書き込んである。「采配の幅を広げることにチャレンジしたい。今までの国学院の野球じゃダメ。変化を求めたい」と締めくくった。行動を進化させ、2021年は多くの人の人生を変えたい。【古川真弥】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「野球手帳」)

年内の練習を終え、来季へ意気込む国学院大・福永主将(撮影・古川真弥)
年内の練習を終え、来季へ意気込む国学院大・福永主将(撮影・古川真弥)