昨年末に飛び込んだ「社会人野球ミキハウスに元巨人・桜井俊貴が復帰」の話題。そこで、桜井とともに取材したい選手がいた。

三重県伊賀市に練習拠点をもつ、社会人野球のミキハウス(大阪・八尾市)。桜井合流後の1月、練習場の食堂で猪原隆雅外野手(23)に話を聞いた。

23年にドラフト指名解禁を迎え指名はなかったが、その2度目のチャンスが訪れた。大卒社会人3年目で、身長178センチ、90キロの右打ちで、走攻守3拍子そろった外野手。同チームは19年まで14年間はクラブチームだった。「今のミキハウスのプロ第1号になりたい」。企業チーム復帰後初のNPB入団を目指し、高らかに宣言した。

首脳陣からは「チームの中心」と期待を受け、2年目の昨季3・4番に座り、5割近い長打率も残して勝負強い打者としてけん引。3年連続の都市対抗野球出場をかけた6月の大一番で、5-6の9回2死二塁に同点左二塁適時打。ドーム行きを結びつけた10回の勝負の扉を開いた。12月には1年目から参加する侍ジャパン社会人代表の一員として第30回BFAアジア選手権に5番で出場し、頂点に立った。「もっと長打を打ちたいけど、打率を残して二塁打も打てるように」。覚悟の3年目が始まった。

大阪・吹田市出身の猪原は、小学生時代はサッカー好きだったものの野球をしていた兄の影響で、気づけば兄と同じチームに入団。高校時代は、府立大冠高で「5番・捕手」として大阪桐蔭と決勝で戦った。聖地への切符は逃したものの、日体大進学後も活躍した。

大学卒業まで1年を切った時期に野球人生に関わる、ある出来事が起こった。当時、社会人の企業チームに決まりかけていたが、会社の都合上、話が立ち消えになり、かなわなかった。「もうどうしよう、続けられる場所がないかもしれない」。悲しみに暮れていた時、ミキハウスが獲得を決めた。

「ここに来たのは、何かの縁。(昨年は)数字が物足りず、そこが上がればチームでもっとアピールできた。今年はまだプロを目指せる1年。目指したい」。

あるライバルとのリベンジも夢見る。高校から長年しのぎを削り合った同学年で巨人ドラフト4位の泉口友汰(24=NTT西日本)だ。「同じ地区からプロに決まった悔しさがあるし、高3も、都市対抗予選の決定戦でも勝てなかったから。プロに行ったら、自分のいるチームで泉口に勝ちたい」。

誠実に野球に向き合う23歳の冬。「自分は出場機会をもらっている」と感謝の気持ちをバットに込め、歓喜の秋にするため、結果にこだわる。【中島麗】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「野球手帳」)