阪神対巨人 9回裏阪神2死一塁、遊ゴロに倒れる原口文仁(撮影・上田博志)=2019年7月10日、甲子園球場
阪神対巨人 9回裏阪神2死一塁、遊ゴロに倒れる原口文仁(撮影・上田博志)=2019年7月10日、甲子園球場

「なんかボクの名前が記事に出てくるらしいじゃない。原が、原が、ってさ」。巨人の指揮官・原辰徳が目を光らせて言ったのは試合前だった。

日刊スポーツは12球団にしっかり担当記者がいる。各球団の取材はそんな記者の“聖域”だ。しかし、なにせ、こんなコラム。タイミング次第で阪神のライバル側の取材もさせてもらう。名将と呼ばれ、独特のオーラを放つ原はまたとないターゲットだ。

聞きにいくと普通に話してくれる。この辺りがちょっと違う。そんな指揮官に確認しておきたかったのは9日の試合のことだ。

4番岡本和真に犠打を命じ、9回に登板したマシソンを2死走者なしから降板させた。まさに執念で指揮を執っている感じだ、とここで書いた。逆に考えればあの試合はそれだけ分岐点と思っていたのか。興味はそこだった。

「それは終わってみないと分かりませんね。あとで振り返って、あの試合がそうだったなと思うことはあるでしょうけれど」

サラリとそう話した後、続けたのはこんな話だ。「あれは勝つための攻めのバントだから。相手から見て消極的なバントだったらどうかな、というのもあるけれど。それにウチにそんなことでどうこう思う選手はいません。それだったら個人軍になっちゃう。ウチは巨人軍なんだから」。最後はお気に入りのフレーズで締まった。

そして試合が始まったが3戦目も阪神の完敗、巨人の完勝で終了。阪神にとって前半戦最後の3連戦は悔しい3連敗に終わった。

それでも虎党は足を運ぶ。この日、甲子園球場を訪れた観客にはクリアファイルのプレゼントがあった。前半戦のベストシーンをデザインしている。その中で一番、大きく扱われていたのは高山俊だ。もちろん5月29日巨人戦の延長12回に代打サヨナラ満塁本塁打を放った場面である。

高山が1位で2位は梅野隆太郎のサイクル安打だ。4月9日DeNA戦(甲子園)。3位は5月5日DeNA戦(甲子園)で出た福留孝介のサヨナラ2ランと続いていく。すべてが5月までの話なのは別に制作の都合ではないだろう。

6月から苦しい戦いが続いている。今季を振り返ったとき思い出すのはどの場面か。「あの試合があったからこそ…」。そんなシーンを逆襲の後半戦、真夏の戦いで増やしてほしい。(敬称略)

阪神今季のベストシーン(撮影・高原寿夫)
阪神今季のベストシーン(撮影・高原寿夫)