大リーグが採用しているという「ワンポイント救援禁止」のルールが日本でもあれば、ひょっとして、阪神は勝てていなかったかもしれない。好相性が続くDeNA戦で今カードも勝ち越しを決めた一戦に思った。

同点の7回、阪神の2番手投手は馬場皐輔だった。大事な場面での起用だなと思ったが、こわいDeNAオースティンに不運な安打を許す。すると指揮官・矢野燿大はスパッとベンチから出て投手交代を告げた。

馬場はオースティンへのワンポイントだった。「打ち取っても代えるつもりだったので」。勝利監督インタビューで矢野はそれを認めた。

正直、監督の采配、起用についてはあまり口を出さずにおきたいと思っている。どんな作戦でも決定して実行するのは指揮官の専権事項だ。うまくいけば称賛されるが失敗すれば批判され、責任を取るのも監督である。結果論のように、外からどうこう言っても仕方がないと思うからだ。

それでも集中して試合を追っていると首をひねってしまうような場面も散見する。最近はナゴヤドームでの犠打の場面でそれはあった。だから「ええねえ」と思ったときも書いておきたい。この日のワンポイント策は意図もはっきりしており締まっていたと思う。

ワンポイント救援禁止は日本でも将来的に導入の可能性があるそうだ。その賛否はここでは置くとして、現在はもちろん認められている。この日はその作戦そのものよりも、事前に決めていたことを迷うことなく実行した矢野の様子がいいと思った。

強いのか。弱いのか。巨人以外との対戦ではすべてに貯金があるようにトータルではある程度、落ち着いてしっかり戦えていると思う。だからこそ巨人戦の負けっぷりが余計に情けなく見えてしまうのだが。

世間によく言われるのが巨人の指揮を執る名将・原辰徳との“違い”だ。矢野は1軍監督2年目。巨人に負けるたびに「そら、原さんには勝てんわ」という声も聞こえてくる。

その差とは何か。いろいろな意見はあるだろうが大事なのは作戦を堂々と実行することだと思う。勝ってきた過去の監督たちはみんなそうだった。残り40試合。勝つために、選手を成長させるために、自分の考えで堂々と指揮を執ればいいし、それをしっかりと見守る役目も虎党にはあるのでは、と思う。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)