一夜にしてまったく違う試合展開になった。これもプロ野球だ。最後の場面、指揮官・矢野燿大は審判団に食い下がっていた。「生涯でも忘れることのできひん試合」。そう称賛した激勝の翌日は0-1の敗戦。悔しかっただろう。

矢野同様に悔しい思いをしているのが梅野隆太郎のはずだ。2試合ぶりにスタメンマスクで復帰。ルーキー伊藤将司を懸命にリードしたものの山川穂高に浴びた1発が致命傷になった。フルカウントからの6球目。梅野は内角にストレートを要求したと見えたが甘めに入ったところを持っていかれたということか。

勝敗同様に注目していたのは「梅野VS森友哉」の戦いだ。大卒、高卒の違いはあるが、ともに13年ドラフトでプロ入り。このとき阪神では森と大阪桐蔭でバッテリーを組んでいた藤浪晋太郎が「森はホンマにいいですよ」と獲得を“進言”していた逸話もある。

結局、西武がドラフト1位で獲得。その代わりでもないが阪神は同4位で梅野を指名している。森も順調だったわけではない。打撃は藤浪の言う通りだったが捕手としては苦労し、外野で試合に出ていた時期もあった。しかし現在は堂々とマスクをかぶっている。

梅野も今や完全に阪神の正捕手だ。前日は疲労、打撃不振などで今季2試合目のベンチスタート。だからこの日が梅野と森の今季“初対戦”だった。以前、梅野が森をどう見ているか、聞いたことがある。

「だって向こうは打つでしょ。すごい打ちますもん」。梅野はプロ同士にしか分からない森の打撃をそう評価していた。自分は総合力で勝負するという気持ちだったのだろうか。しかし今季は梅野もクラッチヒッターぶりを見せている。それもあって2人の対決を楽しみにしていた。

この試合、森は2安打、梅野は無安打に終わった。しかし梅野は7回に今季ここまで20盗塁をマークしている若林楽人を相手にバズーカ成功。一方、森は9回、植田海に盗塁を許した。こちらでは梅野に軍配が上がった。

もちろん捕手にとって大事なのはチームが勝つかどうか、だ。その意味でこの日、梅野は負けたことになるのだろう。さあ勝ち越しのかかった3戦目。勝てば交流戦5割、負ければ2カード連続負け越しだ。阪神はルーキー村上頌樹が先発。チームにとっても梅野にとっても勝負どころだ。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)