「捕手はグラウンドの監督」と言ったのは知将・野村克也だ。現在12球団で捕手出身の監督は2人だけ。阪神矢野燿大とオリックス中嶋聡だ。2人は同学年。さらにともに複数球団でプレーした経験もある。共通項も多く、それを示すような熱い戦いが続く。

「交流戦は短期決戦。1チームとは3試合しかない。早めに仕掛けることが必要だ」。これも2人の指揮官と同学年の広島3連覇監督・緒方孝市(日刊スポーツ評論家)が交流戦前にそう話していた。自身の経験に基づいて分析したのだが、その通り、両監督ともしっかり動いてきている。

中嶋は5回1死一塁で安達了一の場面で初球からヒットエンドランを仕掛けてきた。能見篤史の起用もいい感じだ。矢野も同様である。6回、1点差になったところで先発・秋山拓巳をスッパリ諦め、継投策に出た。特に岩貞祐太、岩崎優と調子を落としかけている2人を堂々と起用。結果を出させたのは今後につながるはずだ。

何より矢野は試合前から“決断”したと言える。兆しが見えないロハスを登録抹消。北條史也を昇格させた。その北條を即「2番二塁」でスタメン起用。中野拓夢を8番に下げるオーダーを組んだ。それがきっちりつながっての1点差勝利。先頭打者を出しながら、なかなか得点できない展開だっただけに矢野が言ったように「大きい勝利」だ。

そこで感じるのが3番マルテの状態だ。ロハスの加入も刺激になったのか今季は開幕から活躍してきた。しかし交流戦に入って調子を落としている。初戦の25日ロッテ戦こそ本塁打をマークしたが、その後は湿りっぱなし。選球眼の良さが持ち味で駆け引きができるのが強みだが、普段、対戦しない投手ばかりで勝手が違うのか。ここまで8試合を終えて30打数3安打1本塁打3打点だ。

こうなれば1度、リフレッシュというか休ませることも視野に入ってくるのではないか。陽川尚将ら代わりに起用する選手もいる。その辺りは矢野の得意な部分でもあるし、そろそろタイミングかもしれない。

もちろん外国人に限らず、レギュラー野手をどこまで我慢するかは難しいところだ。それでも短期決戦で攻めの采配をするために違うバリエーションがあってもいいと思う。ここも1つの勝負どころだ。失敗を恐れず、大胆な采配でしっかり戦い抜いてほしい。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)