両軍の先発投手が5回をもたずに2桁安打を浴び、5失点。真夏の広島での乱打戦はなんとか阪神が制した。多くいる殊勲者の中で注目したのは梅野隆太郎、その守備だ。この日は2回に皮肉にも送球を捕れなかったということで微妙な失策がついたが目立ったのはワンバウンドをそらさないブロックである。

この日、同点の7回2死一、三塁、打者・小園海斗の場面。ワンストライクから岩貞祐太が投じた2球目がワンバウンドした。これを梅野は膝を落としてキャッチ。直前に糸原健斗の好守があっただけに、もしもそらして三走が生還ということになっていればタメ息の出るところだった。

この日だけではない。5日の16回戦では1点リードの8回に出たセットアッパー湯浅京己を助けた。無死一、二塁の危機から2度までもフォークボールがワンバウンドになるのを止めた。さらに痛いサヨナラ負けとなった前日6日も7回に浜地真澄、8回にはケラーのそれぞれワンバウンドを止めている。普通のプレーにも見えるが失敗すれば局面が変わるだけに、チームに貢献する働きなのだ。

坂本誠志郎のコロナ陽性もあり、梅野は先月14日からこの日まで18試合連続でスタメンマスクを続けた。その間、チームの成績は13勝5敗。痛いところで打たれる場面もあり、完璧とはいかないけれど打撃も含めて正捕手・梅野の力が必要なのは間違いない。

「やっぱりこのチームで優勝したい。このメンバーと野球をしたい、みんなと優勝したい」。昨オフ、FA残留した際の梅野の話は忘れていないのである。

それにしても前日が痛すぎる敗戦だっただけに大きい1勝だろう。前カード、阪神が3連勝を逃した巨人に“ヤクルト退治”を期待していたがまさかの3連勝。勝負に「たられば」はないが、もし前日も勝てていれば7・5ゲーム差になっていたところ。それでも8・5差まで来た。

まだまだ遠いが1カ月前、7月7日時点で4位阪神は首位ヤクルトまで16・5ゲーム差だった。1カ月で8ゲームも縮めている。楽観的過ぎるが、来月上旬には肉薄している可能性もあるかもしれない。

もちろん1試合1試合だ。まずは9日からのDeNA3連戦に勝ち越すこと。もうナインみんなバテているとは思うが、残り40試合、虎党のためにも全力を振り絞ってほしい。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)

広島対阪神 2回表阪神1死一塁、左前打を放つ梅野。投手遠藤(撮影・前田充)
広島対阪神 2回表阪神1死一塁、左前打を放つ梅野。投手遠藤(撮影・前田充)
広島対阪神 2回表阪神1死一塁、梅野は左前打を放つ(撮影・加藤孝規)
広島対阪神 2回表阪神1死一塁、梅野は左前打を放つ(撮影・加藤孝規)