巨人が相手となれば「犠打失敗」まで正解だったのでは…と思ってしまうから不思議だ。8回表の攻撃である。1-0と最少リードのこの回、先頭は好投を続ける西勇輝だった。1点差とはいえ、ここは裏の投球に専念した方がいいのでは…。そう思ったりもしたが西勇は中前打で出塁する。

続くは1番・中野拓夢だ。前日に復帰したばかりだが元気いっぱい。相手の虚を突くバント安打で無死一、二塁になった。ここで2番・島田海吏は犠打を狙う。だがゴロにしたものの、ほとんど転がらずに捕手が拾って三塁送球。二走の西勇が封殺されて1死一、二塁になった。

普通ならイヤなムードが漂うところ。だが、そうは感じなかった。西勇が塁に残ってプレーが続いた場合、疲労はもちろんのこと、故障などのアクシデントも気になる。しかしこれでベンチに下がった。残った走者はいずれも俊足の中野、島田海吏だ。はたして3番ロハスは左飛。西勇が三塁にいたらタッチアップで全力疾走する必要があった。

代わりに走ったのは二走の中野だ。左飛にもかかわらず三塁に悠々、セーフ。押せ押せムードは続き、5球団中、巨人戦と東京ドームを苦手にしていた佐藤輝明に貴重な2打席連続の適時打、それも三塁打が飛び出したのである。

結果論を長々と書いているけれど流れはよかったと思う。冒頭に「巨人が相手となれば…」といささか失礼なことを書いたが今季はこれで12勝7敗。わずか「5」の貯金とはいえ、リーグの中で唯一勝ち越しているのが巨人戦だ。理由は分からないが巨人を相手にすると元気の出る今季。最下位・中日が首位ヤクルトを得意にしているように野球は面白い。

この試合の勝因はいろいろあるだろうが5番・大山悠輔の復帰は大きかったと思う。3の0だったが試合にいるだけで佐藤輝明のプレッシャーも少し軽減されたはず。「帰ってきてくれただけで大きな安心感がある」。指揮官・矢野燿大もそう言ったように中野ともどもチームに落ち着きを取り戻させる復帰だろう。

連敗、連勝、連敗を繰り返しているうちに残りは30試合となった。この連勝を合わせ「32連勝」となれば優勝も夢ではない…などと絵空事を言う前に大事なのは次の一戦だ。この東京ドームでの3連勝は2位浮上へ向け、絶対に必要な条件だと感じる。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)

巨人対阪神 8回表阪神1死一、二塁、二塁走者中野はロハスの左飛で三塁へ進塁(撮影・加藤哉)
巨人対阪神 8回表阪神1死一、二塁、二塁走者中野はロハスの左飛で三塁へ進塁(撮影・加藤哉)
巨人対阪神 8回表阪神2死一、三塁、佐藤輝で三塁打生還した中野と島田を迎える矢野監督(撮影・たえ見朱実)
巨人対阪神 8回表阪神2死一、三塁、佐藤輝で三塁打生還した中野と島田を迎える矢野監督(撮影・たえ見朱実)