阪神宜野座キャンプは休日だった。「2勤」での休みは異例だが3勤、4勤なら土、日曜のいずれかを休みにする必要が出てくる。週末のファン訪問を予想しての措置だ。「5勤」にするという手もある。実行したのが2年目の指揮官・新庄剛志率いる日本ハム。いきなり紅白戦という手も使って、相変わらず大胆なチームだ。その名護キャンプにお邪魔した。

指揮官・新庄を始め、バッテリーコーチの山田勝彦、そして今季から打撃コーチとして八木裕を迎えた。虎党になじみの深い面々がこんなに指導者として集まるのもめずらしい。「他球団の指導は初めてなんで。戸惑うことも多いけど楽しいですよ」。八木の明るい表情を見ていて、かつて交わした話を思い出した。

「自分も呼んでもらった時期があるけれど阪神には『代打の切り札』の歴史がある。打撃に関しては主軸と比べても遜色ないレベルの選手がやることです」。 確かに阪神にはそれがある。「パ・リーグでは若手など期待のかかる選手のチャンスの場という感じかもしれないがセ・リーグは…」。そう説明する八木の言いたいことは分かる。終盤、勝負どころで出る代打が結果を左右する場合も少なくない。

指揮官・岡田彰布は「代打の切り札」について言及していないが一部で「最初から『代打の切り札』というのは考えない。それはチームが弱いとき」との考えを示したようだ。確かに自軍のペースで進んでいれば代打に命運を託すこともない。しかし常にうまくいかないこの世界。頼れる代打は重要だし、見ている方としても盛り上がる場面だ。

そんな八木に「いまの阪神なら誰?」と聞く。「阪神のことを言う立場にはないですよ」という八木だが「まあ原口でしょう」と言った。多くの虎党と同じ考えかもしれない。昨年終盤はスタメンも多かった原口文仁。だがここまでの岡田の様子でスタメン構想にいるとは、正直、思えない。

もちろん勝負はこれから。だからこそ宜野座では捕手でなく一塁に加え、外野にも挑戦中だ。それでも失礼を承知で言えば、仮にスタメンでなくても、代打なら1番手という立場になることが大事である。

「そこは割り切り。プロなんだから」。代打について八木も言うが、自身の働き場で力を出すことが重要。多くの人に愛される原口からも目が離せない。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)