どうにも熱い。ルーキー森下翔太は四球を選んでほえたし、これも新人・富田蓮も延長12回表を締め、大声を出していた。まだ開幕2戦目である。それが、このハイテンション。まるでWBC決勝戦だ。

「おかしな開幕やな。明日からゆっくりできる…いうことはないな。こんなん、1年やったら体もたへんぞ」。サヨナラ勝利を決めた後、指揮官・岡田彰布はチームに流れるムードを独特の表現で口にした。

団体競技で勝つために大事なことは何か。チームが結束することだ。子どもでも答えられる。だが、それができない。特にプロは自分以外はライバル。向こうが浮上すれば、こちらは沈む。その状況で「全員野球」と言っても難しい。

だが、それが実現されるときはある。選手全員が自分の任務に突き進み、それを成し遂げようと全力を出し、そして勝つときだと思う。最初からそうしようとするのではなく、結果として全員野球になるのだ。その意味で、この日、興味深い場面があった。

同点の延長10回裏は無死一塁。ここでベンチは代打・木浪聖也を送った。代打と言っても犠打目的の「ピンチバンター」である。木浪はこれを1球で決めた。この犠打でつくった1死二塁の好機で打席に入るのは小幡竜平だった。

木浪からすれば、遊撃争いで後れを取っている相手だ。もしもここで小幡がサヨナラ打を放てば、さらにレギュラーは遠くなる-。そう言えば、いやらしいかもしれないが、それもプロの事実だろう。オレが打ちたいとか、そんなことはよぎったりしないものか。

「あそこはバントが自分の仕事だから、そのことだけに集中していました。次の打者が誰とか考えていなかったけど、あとで『あ、小幡だ』とは、正直、思いましたけどね」。木浪は率直なところを口にした。だが同時に「でも全員で戦った気がします。気持ちがいい日ですね」と言う。

この感じなのだ。開幕戦を勝利で飾った前日。小幡を起用していることについて岡田は「木浪がおるからや」と話していた。経験があり、安心できる控えがいるからこそ若者を起用できるという意味だろう。

チームのムードはいいということだ。もちろん負けが込む時期がくれば、それも変わるかもしれない。だが、いずれにせよこれからの話。まだ2試合だが今季の阪神、かなり、熱い。(敬称略)

阪神対DeNA 10回裏阪神無死、四球を選び雄たけびをあげる森下(撮影・上田博志)
阪神対DeNA 10回裏阪神無死、四球を選び雄たけびをあげる森下(撮影・上田博志)
阪神対DeNA 12回表DeNA2死一塁、宮崎から三振を奪い雄たけびをあげる富田(撮影・上田博志)
阪神対DeNA 12回表DeNA2死一塁、宮崎から三振を奪い雄たけびをあげる富田(撮影・上田博志)