1つの焦点は8回、中日の攻撃だろう。阪神3番手・浜地真澄を攻めて2死一、二塁。ここで村松開人が左翼線への安打を放つ。この打球に内野手出身・左翼ノイジーがチャージし、処理。一塁走者・細川成也の三進を刺したのだ。

1失点か、と思ったこの時点で、しかし、二塁走者・石川昂弥は足を緩め、生還していなかった。中日監督・立浪和義のリクエストもあったが、結局、この回無得点。追加点となっていれば「2-4」だっただけに大きなプレーになった。

「まあ、一生懸命走らなあかんいうことやろなあ。安心して走ってるから、点入らんくなる」-。虎番記者からノイジーの守備への感想を求められた指揮官・岡田彰布は中日のプレーに対してコメントしてしまった。野球好きで率直なこの人らしく、面白い。

対して阪神である。中日先発・柳裕也を攻め、2回までに4点。現状の勢いを見れば楽々という感じに見えた。しかし岡田はまるで緩まない。4回、1死一塁で伊藤将司に犠打を指示。6回は無死一塁で坂本誠志郎にも犠打サインだ。さらに3点差にされた直後の7回には無死一塁から打撃好調・中野拓夢にも犠打を命じたのである。

1試合3犠打は4月1日のDeNA戦(京セラドーム大阪)以来。この試合は延長12回サヨナラ勝ちだったので9回で終わったゲームでは最多の犠打数だ。ちなみに2回の無死一塁では伊藤将がバントを失敗しているので決めていれば「4犠打」で文句なしに今季最多になっていたのだが。

だが、この3犠打はすべて得点に結びつかなかった。野球は甘くない。勝負は常に紙一重である。だからこそ岡田は1点を大事にする野球に務めるのだ。これで7連勝となり、貯金も今季初の2桁「10」とした。

強い。虎党でなくてもそう思うこの状況を受け、一昨年を思い出す。近年、もっとも優勝に近づいたシーズンだ。12球団最多77勝をマークしながらヤクルトに競り負けた。その21年、最初に貯金10に達したのは今季より1カ月以上も早い4月16日。いま大リーグで苦闘する藤浪晋太郎が勝利投手となり「甲子園、大好きです」と泣かせるセリフを言った試合だ。

絶好調に「あかん優勝してまう」というあの雰囲気が生まれた。盛り上がるのはいい。だが浮かれるのはよくないと思う。当然だが岡田は浮かれていない。(敬称略)

中日対阪神 2勝目をあげた伊藤将(左)は岡田監督とハイタッチをする(撮影・上田博志)
中日対阪神 2勝目をあげた伊藤将(左)は岡田監督とハイタッチをする(撮影・上田博志)
中日対阪神 ヒーローインタビューを終えトラッキー(左)とポーズを決めるミエセス(撮影・上田博志)
中日対阪神 ヒーローインタビューを終えトラッキー(左)とポーズを決めるミエセス(撮影・上田博志)