指揮官・岡田彰布は悩んでいるようだ。「明日(30日)から広島とやるのちょっとイヤよな」。順位に影響するからだ。広島は2位マジックが「2」。残り2試合を自力で2つとも勝てば、マツダスタジアムでのCSファーストステージ開催が決定する。岡田にすれば30日は横浜から広島への移動試合だし、控え選手中心で戦いたいところだが、それでは3位DeNAに対して失礼になる。

その気持ちは分かるが、そんなことを言っている場合でもない気もしてきた。言うまでもなく試合結果より、選手の見極め、調整が主眼の日々だが、いい要素が出てこない。

ため息が漏れたのは先発・青柳晃洋か。ポストシーズンでの先発スタッフ入りを争う立場だが、立ち上がりから苦しむ。自身ワースト級の6四球1死球と、制球難の過去がよみがえったよう。CSまでまだ時間はあるとはいえ、厳しい立場になったかもしれない。

さらに打線だ。またしても適時打不足。2回に大山悠輔が3試合連続のアーチをかけたが、なかなかつながらない。2回に木浪聖也、4回に坂本誠志郎が犠飛をマークしたが、今季の阪神打線が売りにしてきた1発ではない適時打の攻撃が見られないのだ。

極め付きは5回か。代打ミエセスからの3連打でつくった無死満塁。ここから森下翔太、大山悠輔、そして佐藤輝明の主軸が3者連続三振を喫する。27日中日戦(甲子園)に続き、2試合続けて「無死満塁で無得点」の光景が広がった。

特にこの場面、DeNAが繰り出してきた「マシンガン継投」は結構、気になった。CS進出はもちろん、本拠地開催を目指す相手は本気。気合十分で来ていたから当然だが、敵将・三浦大輔が見せたこのリレーはかなり目を引いた。

先発で4回まで3失点とピリッとしなかった石田健大を勝利投手の権利がなくなる4回1死で下げたところから始まり、大山に宮城滝太、佐藤輝に石川達也と「一人一殺」の継投策。これで阪神は同点、逆転機を逃した。

DeNAがCSファイナルに進出すれば、同じことをやってくる可能性は大きい。DeNAに「成功体験」を与えてしまったことはうれしくない結果だろう。8回には無安打でダメ押し点を取られた。今季つなぐ野球で得点し続けた阪神のお株を奪われたような格好。なかなかに気持ち悪い結果ではある。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)

DeNA対阪神 5回表阪神無死満塁、空振り三振に倒れ、ベンチで悔しそうにする森下(撮影・藤尾明華)
DeNA対阪神 5回表阪神無死満塁、空振り三振に倒れ、ベンチで悔しそうにする森下(撮影・藤尾明華)
DeNA対阪神 4回裏DeNA1死一、三塁、関根に適時打を浴びた青柳(撮影・江口和貴)
DeNA対阪神 4回裏DeNA1死一、三塁、関根に適時打を浴びた青柳(撮影・江口和貴)