江戸川区中心の下町っ子が集まる都立の篠崎(東東京)が、77年の創部以来初の4強進出を決めた。“下町旋風”の主役は、13安打の打撃陣と、投手2枚看板の一角、帝京からの転入生右腕だ。1点差に迫られた7回2死二塁から登板した山本紘平投手(3年)は、1安打3奪三振無失点で投げ切った。「3年の夏を信じて、ずっと練習してきた」と喜びをかみしめた。

 山本は、都立では珍しい最速144キロ右腕。もともと帝京に入学したが、1年夏に左膝を痛めた。「野球をあきらめて、別の道に行こうと思った」と翌年1月に転校。野球部に入るつもりはなかったが、牛久保和哉監督(32)から「ケガを治して、一緒に甲子園に行こうと言われました」と心が動いた。4月に入部を決断。規定により1年間は公式戦出場ができなかった。

 今夏は、最初で最後の夏。4強進出の快進撃に「しっかり抑えられて、役に立てたかなと思います」と笑った。グラウンドはサッカー部と共用で、平日の練習は約2時間。その3分の2は打撃練習を行う。牛久保監督は「投手は2枚いる。打つことができたら甲子園に近づく」と振り込んだ。

 山本が加わった投手力の充実が、打撃強化にもつながった。山本は「決勝で帝京とやって、甲子園に行きたいです」と、かつての仲間との“再会”を心待ちにしている。【前田祐輔】