チームスローガン「機動破壊」を掲げる高崎健康福祉大高崎(群馬)は、7盗塁で圧倒し、藤井学園寒川(香川)に大勝した。

 この夏も、やっぱり高崎健康福祉大高崎ナインが走りまくった。0-0の3回。先頭の小谷魁星内野手(3年)が中前打で出塁し、すかさずディレードスチールを決めた。群馬大会で見せなかった戦術でバッテリーの動揺を誘うと、連打と四球で無死満塁とし、春日優馬外野手(3年)の2点適時打であっという間に均衡が破られた。

 “健大劇場”が幕を開けた。6点を奪い、なおもこの回1死一塁で「健大のスピードスター」こと宮本隆寛外野手(2年)が左打席に入った。右前へ引っ張った打球が、定位置よりやや深く守っていた右翼手の前へ落ちると、すかさず二塁を陥れた。「打球と(一塁走者の)柘植さんが三塁へ行ったのが見えたので」と当たり前のように「ライト前ツーベース」をやってのけた。

 50メートルは6秒2とそう速くないが、塁間のタイムは3秒8を切る。マーリンズのイチローが同3秒7とされるだけに、高校球児では敵なしだ。打者一巡してなお2死一、三塁の場面では、三塁走者の宮本が一塁にいた小谷と重盗を決めた。「自分の判断」(宮本)で本塁へ。タイミングはアウトだったが、絶妙なスライディングで捕手のガードをかいくぐり7点目を奪った。

 走塁の極意は「決断して勇気を持つこと」。私生活でも迷いを禁じ、最近新しいグラブの購入も即決した。初の甲子園で3盗塁を決め「次の試合も走りまくってかき回したい」と目を輝かせた。10安打7盗塁で甲子園10勝目を挙げた青柳博文監督(43)は「この夏は勝利打点に絡む走塁を目指している」と2季連続8強の壁を越えるべく、進化した「機動破壊」を実践した。【和田美保】