東北のトップを切って、第98回全国高校野球選手権青森大会が今日7日、開幕する。高校野球100年の昨夏、仙台育英(宮城)は、エース佐藤世那投手(現オリックス)と主砲平沢大河内野手(現ロッテ)の2枚看板を擁し準優勝に輝いた。ドラフトでも東北の高校から投手5人(育成含む)、内野手2人が指名され豊作だった。野球記者とデスクの座談会形式で、16年の注目選手をピックアップした。

 デスク(以下デ) 今年もやってきました夏の高校野球! うだるような暑い日はスカッと爽快なホームランを見たいよね。

 記者(以下記) 今年の東北NO・1野手は酒田南(山形)の石垣雅海内野手(3年)で決まりです。高校通算34本塁打の長打力に、遠投100メートルの強肩、50メートル5秒9の脚力も兼ね備えています。

 デ 彼のすごさは?

 記 腰がねじりきれるぐらいのフルスイングと、長距離砲特有の高く上がる打球の角度です。今春の県大会では、つまりながらもバックスクリーンに運ぶ馬力を見せました。春の東北大会後の新潟遠征で2発、先月26日の宮城遠征2試合でも9打数6安打2本塁打。完全に量産態勢に入りました。

 デ 去年は外野手だったよね。

 記 高卒でのプロ入りを狙うためこの春から、遊撃手に転向しました。課題に挙げられていたスローイングが矯正されました。複数のスカウトがドラフト上位候補だとみています。

 デ 楽しみな存在だね。プロ野球は日本ハム大谷の二刀流でわいているけど。

 記 母校花巻東(岩手)に「大谷2世」がいます。191センチ、84キロの4番千葉耕太外野手(3年)は打って通算15本塁打を超える長打力と、投げては最速140キロを誇る二刀流です。

 デ この春はどうだった?

 記 春の県大会途中から右肩痛で先発を外れ、東北大会ではベンチ外でした。それは夏本番に間に合わすためです。テークバックを小さく、前を大きく使う「大谷投法」を踏襲しています。この夏の投球が楽しみですね。本職の打撃は昨夏の甲子園で安打を打ってますし、本塁打を期待できます。

 デ 今年の仙台育英はどうだろう?

 記 「平沢2世」の西巻賢二内野手(2年)に注目です。昨夏の甲子園では1年生で唯一ベンチ入りし、1年秋から「1番遊撃」に定着しています。

 デ 167センチ、60キロで小柄だね。

 記 体の小ささを感じさせません。シュアな打撃と堅実な守備が売りです。左打ちの平沢より、同じ右打ちで172センチのソフトバンク今宮の方が似たタイプですね。

 デ 2年生だから清宮世代か。

 記 昨夏の甲子園準決勝で早実と対戦して、連絡先を交換したそうです。「甲子園で会おう」と再会を誓っているようです。

 デ 今年の投手陣はどうだろう。

 記 素質上位は八戸工大一(青森)の種市篤暉投手(3年)です。183センチ、83キロの恵まれた体から最速148キロの直球を投げ込みます。冬に背中を痛めて春は野手での出場が続きましたが、今春初登板となった春の東北大会2試合では2回2安打3失点とまずまずの投球でした。

 デ 背中は大丈夫なの?

 記 種市いわく「問題ない」とのこと。冬の投げない間にはスクワットと走り込みで体を鍛え、太ももまわりは5センチ伸びて61センチ、体重も74キロから9キロも増量しました。登板経験を積んで本調子で夏本番に臨めれば、間違いなく「戦国青森」の主役に躍り出ます。

 デ 春の県大会準決勝で負けた聖光学院(福島)はどうしちゃったの。

 記 エース左腕の鈴木拓人投手(3年)がピリっとしません。強気に腕を振る投球が評価され、昨春の東北大会からメンバー入りして昨秋は絶対的なエースでした。今春は細かい制球に苦しみ、打ち込まれました。ですが、夏本番に必ず合わせてくるのが聖光の強さ。鈴木拓が完全復調すれば10連覇は盤石になります。

 デ 春の東北大会で宮城県勢が4強中、3校を占めた。

 記 東北、東陵、仙台育英はいずれも、高いレベルの投手力が自慢です。中でも面白いのが東陵のエース右腕・八鍬晃貴投手(3年)。常時120キロ台の直球に低めの変化球を組みあわせ、打たせてとります。球速に憧れを持つ球児がほとんどの中、八鍬は「球速に全くこだわっていません」とわが道を行きます。

 デ この夏の他の見どころは?

 記 今年の1年生世代が18年の第100回大会の3年生世代になります。東北の杉沢龍内野手(1年)は「1番遊撃」でバリバリのレギュラー。積極的な打撃と走塁が売りで、2年後が楽しみです。

 デ 去年はあと1歩で白河の関が越えられなかったけど、今年はどう?

 記 近年、東北勢はレベルが上がっています。毎年、全国制覇する気持ちで取材しています。当然、優勝紙面は日刊スポーツで!