今年こそ分厚い壁を破る。岩手大会は今日8日に開幕する。シード校の花巻南は、強豪私学に負けない練習量を誇り、初の甲子園へ本気だ。昨秋4強に進出、今春は8強入りと実力は高い。岩手では95年から21年連続で私立校が優勝。今春のセンバツに21世紀枠で出場した釜石を刺激にしながら、94年の盛岡四以来22年ぶりの公立校制覇を狙う。7日は東北6県の先陣を切って、青森大会がスタートした。

 花巻南が強豪私学を倒す熱い夏を迎える。新チーム結成から、長時間の練習に耐えてきた小原拓主将(3年)は「これだけやってきた」と自負。エース右腕の前野雄介(3年)が「(3年生は)最後なので、甲子園への集大成」と声を弾ませた。

 平日の朝5時半。学校近くに住む選手がグラウンドに立つ。その後、続々と選手が到着して朝8時まで練習。放課後は暗くなるまで汗を流し、自宅に帰った各選手は個人練習をする。夏休み中は朝6時から夕方6時まで12時間。君ケ洞(きみがほら)卓朗監督(36)は「練習量は絶対に必要だと思う。自分たちで追い込める」とその効果を話す。

 傑出した選手がいないからこそ、練習を積むことがチーム力を上げる。実戦を想定し、シートノックはほとんど行わない。一、三塁などに走者を置き、1点も許されない場面で投手、内野手が打球を処理し、判断力を磨く。攻撃では「1死二塁より得点が入る」(君ケ洞監督)1死三塁を理想とし、盗塁やヒットエンドラン、犠打などを絡める。監督は「1点を大事に取って、1点を大事に守る」と強調。昨秋、今春の県大会の計5勝で最大点差は3。接戦に強い。

 昨秋の準決勝で敗れた釜石がセンバツに出場。選手たちは「もし自分たちが勝っていたら…」と悔しさと一緒に、刺激にもなった。5月の花巻地区予選では、今夏の優勝候補・花巻東に延長10回3-4と惜敗。強豪私学と互角に戦えることは既に証明している。

 12日の初戦の2回戦は盛岡中央、3回戦は順当なら黒沢尻工。甲子園を経験した2校を撃破しないと先は見えてこないが、君ケ洞監督は「公立校が甲子園に行くには、トーナメントで強くならなきゃいけない」とプラスに捉える。東北6県でもっとも私学の壁が厚いのが岩手。21年分の公立校の無念を晴らす戦いが、いよいよ始まる。【久野朗】

 ◆県立花巻南高等学校 1911年(明44)花巻高等女学校として開校。学制改革により48年に花巻第二、同年に花巻第一と統合して花巻高と改称。53年に花巻南となり定時制を併設。91年に新校舎に移転し、男女共学となる。生徒数597人(男子219人)。野球部員は43人(マネジャー6人含む)。所在地は岩手県花巻市中北万丁目288の1。遠藤可奈子校長。