創部3年目のクラークが5-4で旭川実を下し、初の決勝進出を果たした。4-4の同点で迎えた9回裏2死三塁、2番の福田健悟二塁手(3年)が中前適時打を放ち、今大会2回目のサヨナラ勝ち。北大会では1991年(平3)の旭川東栄以来25年ぶりの初出場決勝進出を決め、71年の留萌以来45年ぶりの初出場初優勝に王手をかけた。滝川西は3-1で江陵を破り03年以来の決勝進出。今日21日の決勝は94年の砂川北対滝川西以来22年ぶりの空知地区対決となった。

 4-4の同点に追いつかれた直後の9回裏2死三塁。福田が相手投手のスライダーをはじき返すと、白球は高い金属音を残して左前に抜けた。三塁から浜本が小躍りするように生還、歴史を塗り替えるホームを踏む。一塁を回った福田は、両手を高く上げながらジャンプし、歓喜の輪に加わった。「甲子園に1歩近づいた。全員で勝ち取った1勝です」。ヒーローの声が弾んだ。

 2年前の春、部員9人でスタートを切った。全国から選手は集まったが、経験や実績はバラバラ。春夏合わせ甲子園12回出場の実績を誇る佐々木啓司監督(60)は、前任の駒大岩見沢の閉校により赴任し「3年目で甲子園とは言ったが…」と半信半疑だったことを打ち明ける。それでも野球エリートの集まった「駒大岩見沢の選手が送ってきた3年間と同じ時間を、クラークでも繰り返した」という。

 1年時は1・5キロの鉄バットを使う打撃練習を終えると、手首に激痛が走った。2試合連続2安打の樺沢は「以前は当たってもボールが前に飛ばなかったが、今は大丈夫」と進化を証言する。直球はバットを上から落とし、変化球は逆方向に流し打ち、落ちるボールはすくい上げる“スリーライン打法”も駒大岩見沢時代と同じ。福田は「監督の指導を、3年間身につけてきたから打てるようになった」と胸を張る。2回戦の試合途中に手足がつって降板した平沢津も、この日はストレッチをしながら9回を完投。「次もしっかり投げて勝ちます」と笑った。

 8月18日には新グラウンドの落成式で智弁和歌山や北海と対戦する“ミニ甲子園”の予定もあるが、本命はもちろん“リアル甲子園”出場。決勝の相手、滝川西には昨秋の地区3回戦で7回コールド負けしたが、佐々木監督は「甲子園に行くチームの雰囲気になってきた」。指揮官にとっては13度目、クラークでは初の舞台を視界にとらえる。【中島洋尚】

 ◆北海道大会の初出場初優勝 南北分離後、北は71年の留萌が達成。帯広柏葉、稚内、釧路第一を下し、決勝で旭川龍谷を3-2で破り優勝した。甲子園では県岐阜商に0-1で惜敗した。南は66年の駒大苫小牧のみで、決勝で室蘭清水丘を2-0で下し優勝した。

 ◆空知勢の決勝 南北分離後、決勝での空知対決は07年に南空知が空知として北北海道に組み込まれてからは初。旧北空知では94年に砂川北と滝川西が対戦。砂川北が5-2で優勝した。