背番号1が似合う男になってきた。仙台育英・中島隼也投手(3年)が聖和学園に9回5安打1四球7奪三振の好投で2-0の完封勝利を挙げた。今夏からエースナンバーを背負った右腕は赤土の軟らかいマウンドに苦しんだが、重心を修正。野手陣を信じ、変化球主体で打たせて取る投球で接戦を制した。制球を乱し、マウンドで独り相撲を演じることが多かった精神面も成長。チームを8強に導いた。

 1人じゃない。6回2死一、二塁。仙台育英・中島はマウンドで周りの声に安心感を覚えた。「(捕手若狭)武瑠も瀬戸(泰地主将)も声をかけてくれていた。1人にならずに抑えられた」。冷静になると相手打線は直球を狙い球にしていると感じた。1、2、3のリズムを崩す。カウント2-2からの5球目。勝負球に選んだのはスライダー。タイミングを外し、見逃し三振を奪うと思わず跳びはねた。「流れに乗っていけたかな」。勢いを切った。

 足元の不調和にもばたつかなかった。軟らかい赤土のマウンド。右足が足首まで埋まるほど削れ、序盤はボールが高く浮いた。「つま先からしっかり着くようにして、体重を後ろに残すようにした」とリリースがぶれないように調整。前試合までの直球主体から縦に落ちるカーブ、チェンジアップ、スライダーと制球と緩急を使う投球に変えた。

 エースの風格が出てきた。今夏から与えられた背番号1。受け止める重みを言葉が変えた。これまで制球を崩すと周りが見えず、独り相撲を繰り広げた。だが現オリックス佐藤世らには常々「マウンドで1人になるな」と話をされた。迎えた最後の夏。周りを見て、守るバックが助けてくれると意味が分かった。佐々木順一朗監督(56)も「1つ1つ成長した。精神的に成長して、1番にふさわしいピッチングをしてくれている」と目を細める。

 完封勝利に中島は「みんなに助けられて感謝している。目標は甲子園。次も野手を信じてやっていきたい」。頼り、頼られる仙台育英の「1番」に強さが出てきた。【島根純】