最高難度の新技「イマイ」で4年ぶりの8強だ。作新学院(栃木)の今井達也投手(3年)が2試合連続2ケタとなる10奪三振と、自己最速を1キロ更新する152キロをマーク。カットボールのような高速変化球を繰り出し、6-2で花咲徳栄(埼玉)を破った。

 さながら大技を決めたオリンピアンのように、作新学院・今井は両手を突き上げてガッツポーズした。9回1死一塁。右打者の外角低めへ逃げ落ちる132キロで、狙いどおり三ゴロ併殺。2戦連続完投勝利の“着地”は完璧だった。「ゲッツーがほしい場面だった。また完投できたのが収穫です」とさわやかに笑った。

 12日の尽誠学園戦は151キロの剛速球で13奪三振完封。鮮烈な甲子園デビューを果たした。速球対策をされるのは想定済み。「縦スライダーの感覚で投げています」という必殺球で花咲徳栄の裏をかいた。「イマイ」とでも呼ぶべき武器は直球と同じ軌道。高速で、打者の手元でヒュッと落ちる。

 捕手のサインにカットボールはない。が、指先でボールを切ることで鋭い変化を可能にしている。参考にしたのは、1試合22奪三振の甲子園記録を持つ楽天松井裕の縦スラ。入学時から「球が速い」と有名だったが、速いだけでは打たれた。自宅通いから寮生活を始めた昨秋「タイミングを外せて、キレもある低めの変化球を」と習得に励んだ。

 モノになったのは夏前だった。最後の打者となった花咲徳栄・野本は、5回も秘球に3球連続空振り三振。ワンバウンドでもスイングする打者が続出した。中4日の登板はスタミナも十分で、初回には今大会最速タイ、自己最速を更新する152キロを記録。5月に練習試合で対戦した敵将の岩井監督をして「押すことも引くこともできる。5月とは別人」と言わしめた。

 打っても先制打など2安打2打点。大車輪の活躍で「高校BIG3」の高橋昂を退け、チームを8強に導いた。「高橋くんは最後まで自分のペースで投げていて、さすがだった。成長するのに必要な、貴重な投げ合いでした」。今井は勝ちながら、どんどん進化する。【鎌田良美】