ノーシードの日大三島は延長14回の末に4-3で浜松商にサヨナラ勝ち。今大会不調が続いたエース海野陽日(はるひ=3年)が14回途中まで8安打3失点の粘投を見せ、28年ぶり2度目の夏甲子園に王手をかけた。

 日大三島のエース海野が大一番で輝きを放った。初回から直球とスライダーを織り交ぜ、6回まで散発3安打無失点。捕逸で先制を許した7回以降も打たせて取る投球で凡打の山を築いた。「最後までいくつもりでした」。ギアを上げた10回からの3イニングも無安打。延長14回に2失点したが、その裏の攻撃で2死一、三塁から主将の長尾樹(いつき)内野手(3年)がサヨナラ打。エースの粘投が劇的勝利を呼び込んだ。

 この日は今大会最長の13回2/3を投げ切った。執念の189球だった。「今日こそは自分がチームを勝たせる番でした」。1回戦の清水東戦では8安打4失点で4回降板。その後も調子が上がらず、準々決勝までの計5試合で13失点を喫した。打線の援護で勝ち進んできたが、不本意な投球に「迷惑をかけていました」。

 背水の思いで臨んだ準決勝のマウンドは原点に返った。試合前日に「一番よかった」と振り返る昨夏の投球をビデオで見返し、フォームを修正。肘の角度を「投げやすい形」に微調整したという。完投こそ逃したが、エースの復調に川口剛監督(39)も「ナイスピッチング」とたたえた。

 28年ぶり2度目の甲子園出場まであと1勝。東部勢では韮山が95年に優勝して以来の快挙に王手をかけた。海野は「勝ったので疲れは吹っ飛びました。決勝も勝ちます」。スタンド観戦した両親は「太陽のように明るく笑っている子に育ってほしい」という思いを込めて、陽日(はるひ)と名付けた。笑顔が戻った背番号「1」は最後も勝って、笑うつもりだ。【神谷亮磨】